CuraanaNow
「もう一度……元の世界の青空が見たいなって。
もしも、この奥に帰る方法があるかもしれないなら
探してみたいなって。
あの汚染の源泉の奥に、まだ見ぬ世界があるのならって。
……終わりゆく世界で安寧に生きるより
私はそういうものに賭けてみたかったの。
ただ……それだけ。」
in:クラアナ付近
「……まぁ、でもあんまり大きな声で言うことでもないから。」
流石に、一緒に潜るような人には相談するだろうけれど。
「……貴方は、青い空って見たことある?」
ふと、上を見上げる。
この辺りはエデンの中でも下層に当たる。
上はきっとエデンボードなどの市民権のある人間やキカイの居住区になっていて
蓋がされているように天井が見えるのではないだろうか。
in:クラアナ付近
「流石に隠しておけるものでもないものね……」
やはり一人で無理しすぎるものじゃないね、と苦笑いをして。
「上級市民権か……うん。
6人分位は買える値段はあるよ。
きっと頑張れば永久生存権くらい買えるんだろうけど。」
余生を安らかに過ごせるかといったら微妙かな、と苦笑い。
身体全身をくまなく新品にしてくれるというのなら話は別かもしれないが。
in:クラアナ付近
「……、あり、がと。
でも、治療は行っても……しょうがないかも。」
お水を受け取り、うがいをしようとして咳き込んだ。
水に混じって多量の血液が吐き出される。
水のおかげで詰まっていたものが出たような感覚もあるのか
幾分か楽になったように見えるだろうか。
「ゲホッ……は、はふ……汚染を、思いっきり吸い込んじゃって。
中が……もうダメっぽいんだ。
辛うじて、まだ汚染されきってはないけど。」
少なくとも、前線に立てるような身体ではなくなった、ということらしい。
in:クラアナ付近
荒い息はまだ続いていて、生きていることは確認できる。
口から仄暗い血液が未だにポタポタと流れ出ていて苦しそうではあるが……
「いき……てる。
生きてる……よ。なんとか。
……あなたも大概、白いよね……?」
などと冗談を言える程度の体力はまだ存在しているらしい。
若干強がった笑みを浮かべて見せた。
in:クラアナ付近
「ぅ、ぅ……げほ、ゴホッ……」
なんとか、壁に寄りかかるようにしながらクラアナから這い出てくる少女が一人。
今日は一人で、しかし外相といった外相は見られず。
ただ、夥しい量の、真っ黒に濁った血液らしき何かを吐き出していた。
そのまま倒れこむように、入り口付近の物陰に滑りこむように身体を休めている。
in:クラアナ付近
「ん……ヨシ。動くね。」
新しくついたらしい右腕をグルングルン。
まだ生体模造義体のようだが。
「次は約4億って……もう買わせる気ないよね……。」
言いながらクラアナの方へ歩いてゆく。
in:クラアナ付近
「……」
黙秘した。
「7800万かぁ……目がくらくらしそう。」
in:クラアナ付近
「……模造生体義体。
高すぎて今は手が出ないから……しばらく片腕かなっ、つぅ……」
そのままおそらく治療場所へ運ばれるだろう。
in:クラアナ付近
「やらかし、ちゃった……。」
またもや、右腕を失った少女が青年に抱えられるようにしてクラアナから出てくる。
白い髪と白い服は、削り取られたように削げ落ちた右腕付近から真っ赤に染まっていた。
ポタポタ、と血を垂らしながらなんとか戻ってきたようだ。
in:クラアナ付近
「……いこ。」
アナの方へくいくい。
in:クラアナ付近
「……いこ。」
アナの方へくいくい。
in:クラアナ付近
「でも……そうやって悲しいって感じる心を止めちゃうのは。
もっと悲しいことだと思うんだ。
……だって、それは人の温かさだと思うから。
だから、良いことと半分こできれば良いよね。」
in:クラアナ付近
「……うん。 気をつけるよ。」
in:クラアナ付近
「……悲しいね。」
ぼそり、同じ方向を見てつぶやいている少女だ。
in:クラアナ付近
「……死んじゃったら別の人、だもんね。」
よくわかる話だ、と思った。
in:クラアナ付近
「……」
しゃしゃり出るところではないだろう、と物陰に身を潜めた。
in:クラアナ付近
「……ミナソコか。」
溺れ死んだか、津波に攫われたか。
何にしても逃げる判断をし損ねるとそうなる。
少女も一度足を失っているのでよく知っていた。
in:クラアナ付近
「3000でも黒字にしようと思えばできるもんね……」
なんて???
in:クラアナ付近
気がついたらエデンにいたという家出少女。
ニホンという国の出身。
蒼い瞳に白銀の髪が特徴であり、スレンダー。
年齢の割に背も低く、痩せ型。
いつも首に紅いスカーフを巻いており、喧騒や人だかりを嫌っている節がある。
特に中年男性に対して恐怖心を見せることがあり、その怯え方は異常なほど。
とある特徴に合致しなければそうそう起こらないが、起きる時は用心したほうがいいだろう。
illustration: @skrige