彼女は、至って普通の穏やかな女性であった。
しかしその特異な瞳……所謂オッドアイは人々の恐怖、憎悪の視線を集めることとなる。
その瞳は生まれつきであり、彼女に非は無かった。
幼少の頃は良かった。興味こそ惹けどそこに負の感情は無かったのだから。
年を重ねるごとに視線に攻撃性を感じるようになった。
いつしか彼女は孤独を望むようになった。
しかし現代においては完全な孤独で生きていくことは出来ない。
「きっと社会に出れば、あの恐ろしい目線を向けられることは無い」
会社へ就職し、そんな彼女の希望は1日と持たず虚しく潰えた。
慰めてくれていた両親も、近所からの嫌がらせで気が狂ってしまった。
もうどこにも逃げるところなんてない。
どこにも
そう、どこにも
……そうだったはずなのに
余談だが、彼女の名は"遠野(とおの)"ではなく、"違野(たがや)"である