CuraanaNow
「 」
胸に印章が押される、それは検査済の証。
もっとも、一般の個体差の大きい探索者とは違いPlantsDollは非常に個体ごとの差が小さく、むしろその小さい個性の中で基準というものを定める作業になるのだが、そのため生産と消費のバランスもあって即時的に結果は出せず、審査会場の外れ、研究区画により近い、彼らの製造ベースからのラインを通り、出ていく。
in:探索者審査会場
「 どーだろう ね こうかん じき かな」
多くの人影、混ざるところに居る自分とすれ違いながら、入っていく。
五体満足な個体もいればそうでない個体もいる、この個体は肘からなくなった片腕と、そして跡すら深く残る傷を持つ後者だ。
「ほかのこのほうが がんばれるかな ?」
力尽きるまで使い潰されるか、それともここで終わりを告げられるか、どちらでも構わないはずだけれど、なんだか前に見た顔が悲しむ、そんな気もして。
in:探索者審査会場
「 」
培養装置の中で眠る自分と、そして自分と、その他数多の自分を見る。
まだ識別番号のないそれを。
壊れかけの身体、いつか壊れきってしまうであろう"自分"の体をそして見つめる
「こうかん じき?」
研究区画の一角、ただ無感情にそう呟いて……
in:研究区画
「 」
多くの自分とともに施設で横になる、埋め尽くす緑に一つだけ白い花が見えて、なんだかそれがわずかに胸を暖かくする。
使命を果たすために壊れるのは当たり前のことでしかないのに、少しだけそれが来なければいいのに、なんて何故か思いながら……
研究施設、"雑草"(Plantschildren)生産施設からは、今日も数字の違うだけの自分たちが旅立って、そして壊れて、運び込まれてくる。
in:研究区画
「」
宛はないけれど、探索に勤しめる肉体状態でもない。
ゆえに一度の帰還。製造場所への……。
数多の自分がそこにいて、命令を待つ、動くだけで痛いくらいの肉体では他の自分に並べることなんてきっとないけれど。
in:研究区画
「がんばる にーに ねーねに おうえんするよ」
手を振って応援をして……
自分の価値には興味がない、だって所詮量産型でしかないから。
死んでも、代わりはいるのだから。
使い潰されるまでの運命、それは当然と教え込まれていて。
ゆえに探索をしない間は活動そのものが殆どない、他の任務に勤しむものは他の個体である、というのもあるけれど。
in:クラアナ付近
「まだ もぐらないよ」
流石にこの状態で潜る気はない、シザイは集めなきゃならないけれど、倒れて落とすことも、それにより廃棄されるのも避けなければならないし。
何より、この状態だと、なんだか使命なのに嫌な感じもするし……
in:クラアナ付近
「ごめんね ねーね ちょっとだけっておもったら こーなっちゃった」
百懋の放を向いてとっても申し訳無さそうに……
やっぱり素直に頼れたら良かったのかな、なんて、だいぶ反省した様子で……
そして今度はバスカーヴィルの方へと向き直り頭を下げる
「きのうは ありがとうございました おかげで ここまでは ちりょうできたよ」
in:クラアナ付近
「 けほ っ ひゅう ただ いま」
昨日あんなことになっていたが包帯と支えでなんとか生存可能までは修復されて、まだ本調子ではないながら戻ってきたようだ……
時々まだヒュウッという音が聞こえる、あくまで置換ではなく補強でしかないためだろうが。
少なくとも、見た目だけは最低限マシにはなっている。
in:クラアナ付近
「」
治療区画でくったりと力尽きるように休まされている、胴体には大きく包帯や支えを巻かれて……
in:メインボード
「 あり が と ぉ」
少しだけ安心したように、わずかに落ち着いた声色が混じって……
あまりにも軽い身体、ろくな栄養もとってないであろうことすら感じさせて、けれど潰れたところには謎の強度はあって……何かの繊維にも似たような……
もっとも、それはちぎれることへの対策にしかなってはいないが……
そして、そのまま少年は微かに安らかに、目を閉じた……
in:クラアナ付近
「ち りょ お おね がい」
弱々しい声で、今まで負った傷により失われた片腕、ただ胴体も潰れてはいるがちぎれてはいないようで……
ひゅー、ひゅーと空気が漏れる音は聞こえる、声もそこに混ざっている程度のか細いものだが……
in:クラアナ付近
「 っ あ 」
一般人ならば致命傷だろうが、どうにもこの生命は強度的には頑丈なようで……
かすかな息はまだ残り、軽く、力なく手は地面を擦る……
in:クラアナ付近
そして、程なくしてべしゃりと少年は入り口へと放り出される。
悲しげな顔をして、ひゅう、と弱々しい息をして……
見ると、胴体が無残に潰れている、肺が潰れ、ごぽりと血が溢れる……
あっけない、一噛みで容易に弱々しい身体は砕かれたのだ。
in:クラアナ付近
「がんばれる かな」
と、一人で徐ろに旅立っていく、踏み込めた一番下まで……
無謀かもしれないけれど、それでも誰かの足は引っ張りたくないなって思いながら……
in:クラアナ付近
「おかえりなさい」
帰ってきた姿と、旅立つ準備をしている姿を眺めている、今の自分じゃ力不足だから、もっと、頑張ってみたいな、なんて少しだけ思いながら……
一人ぼっちでも、少しだけ、5層を歩いてみようかな
in:クラアナ付近
「がんばってね ねーね ぼくも がんばらなきゃ」
in:クラアナ付近
「あさいところなら おてつだい するよ」
5層にならないと強くなれないから、手伝ってとはそんなに言えない、手伝うことこそ本能。
in:クラアナ付近
「 」
服にくるまって丸まっている、隙間からわずかにさす光があるところは探しているものの夜だと人工灯しかないため少し寂しげ
in:クラアナ付近
「たて もっておこう かな?」
ずっと攻撃一本だった、そんな知恵持ってなかったので。
難しいことを考えられない頭にはそういう戦術しかないのだ。
in:クラアナ付近
どこにでもありふれた容姿をした量産型の小さな子供。ちょっと植物のような匂いがする。
布切れを再利用しボタンで留めただけのような服装に長い緑の髪、少しだけ青臭い匂いをしていて柔らかくもしっかりとした手触りを持つ。
具体的に言えばそのへんで大量の同じ見た目の死体が落ちているくらいに。
生産性に優れた複製体としての生命として大量の複製が製造されており彼もそのうちの一体に過ぎない。
生産性のかわりにスペックでは劣り、あくまで採掘用の消耗品と見なされているため名前は与えられず、刻まれた製造ナンバーが個体識別を行うためのほぼ唯一の手段。
量産された個体は総じて純粋な性格をしており素直なのだが己の命に頓着が一切なく、また頭は悪く騙されやすい。まるで最初から道具として使いやすいよう疑うという機能を取り除かれているかのように。
死ぬことを壊れる、または使い切ると称し、そうされることを強く臨んでいる。使われて使われて、その終わりに使い切ってもらうことが自分の願いと。
#キルフリー #捕食フリー #切断フリー #既知フリー(量産品なので)
PL:AstLayer
絵は藤白さんにご依頼しました