CuraanaNow
「…………」
青年は何とも言えない顔になった。
今後待っていることを考えたら、本当に何も言えなくなった。言葉、持ってないんだけど。
『……じゃ、オイラ達、永久生存権買ってくるから。さよならなんだぞ~!!』
ウサギがお手てフリフリすれば、青年はそのまま去ろうとするか。
in:アンダーボード
「…………」
少しだけ、ため息。
『イズミは丁度不在だったみたいだな~。仕方がないんだぞ!でも丁度、アルフィードとダニエルが居てよかった、イズミのことー、宜しく頼むんだぞ!あとダニエルはもうちょっと肩の力抜いて、アルフィードは皆の言うこと聞いてあげるんだぞ!』
in:アンダーボード
『うん!最初からそういう目的だったからな!オイラ達に監査の番来る前に買っちゃうんだぞ!』
「…………」
すい、と青年は誰かを探すように目配せしているか。
in:アンダーボード
『もちろん!何時でも遊びに行くし何時でも来てくれよな~!』
「…………」
青年もこくこく、と首を縦に降る。
in:アンダーボード
『……、リサ?』
あっこいつら名前知ってねえ!
in:アンダーボード
『そゆことなんだぞ!ダニエルは頭がいいんだぞ!……で、だ』
『オイラ達、今日にも永久生存権買っちまうことにしたんだぞー!』
in:アンダーボード
『???』
こてん、ウサギが首を傾げる。
『で、話続けるんだけどなー、とりあえず取引には通じたってことでイズミの処分はしない、放逐するからこれからは変な感じにはならない筈、なんだぞ!で、こっから重要なんだけど……』
『イズミの複製体ーー……まーその約束が、今代限りってことなんだぞ……』
in:アンダーボード
『永久生存権なんか後だぞ!オイラ達、イズミのーー……ミッションがほら、上手くいったから言質取りに行ってたんだぞ!』
なんかふわっとした言い方になってるのはセンシティブ学習部が消去されたからですね……
「…………」
青年もこくり、と首を縦に降る。
in:アンダーボード
『ただいまーー!帰ってきたんだぞー』
元気の良いうさちゃん!
青年は相変わらず黙したままである。
in:アンダーボード
パソコンを繋ぐ。
ウサギのプログラムを書き換える。
××××についての一切の発言を禁じる。
そして青年はかつての機械とパソコンを異形の足で踏み潰し、蹴っ飛ばしてから改めてアンダーボードの方面へと歩いていくか。
in:研究区画
「…………」
ぴたり、青年は足を止める。縫い付けられたように動けなくなる。懐から取り出したのは、掌サイズの小さなパソコンだ。バッテリーの消耗が激しいから、数十分も稼働できない、青年が道具と持ってきていたもの。ウサギのプログラムを手早く弄くれるもの。
はて、彼らがそれを知ることはあるだろうか。
誰かが教えるかもしれない。
或いは、自分達で見るかもしれない。
なんにせよ、トリガーを自分の手で引くことだけはーー……どうしても。
スズメ、スズメ、舌切りスズメ。
言語による鍵の流出を恐れた父はかつて唯一の後継者である青年の舌を切り取る事で発語機能を殺した。
……喋らないことは、青年にとって機械弄りの次に得意だ。
『スズメは悪くないんだぞ』
in:研究区画
「…………」
青年は非常に重い足取りで歩く。
アンダーボードにとってそれは、ひどくショッキングな出来事を知ってしまったからだ。帰って報告しなければならない、あの人達に言わなければならない。
けれども、『それ』を伝えたらどのようになってしまうのかが解らなくて、恐ろしささえも感じる。
顔役二人はギリギリだ。薄氷の上の集団生活、一度吹けば崩れることを、青年は知っている。
アンダーボードは良いところ。
居心地の良い、良いところ。
それが崩れるかもしれない、他でもない、自分のせいで。
in:研究区画
「…………」
とりあえず目当ての場所には到着するか。
目的地の辺りはきちんと覚えている。
異形の足を踏み込めば、瞬く間に何処こかへと姿を消すか。追いかける者がいたとしても、追跡は不可能に近いだろう。
in:研究区画
「…………」
すっと青年は黙ったまま姿を消すか。
研究区画の方へ静かに向かっていくだろう。
in:アンダーボード
「…………」
幸せとはなんだろう……。
確かに水もご飯も寝るところもあって一定の治安もあるここは幸せかもしれない……。
in:アンダーボード
『小屋作るなら空調設備つけるんだぞ!!夏はひんやり冬はぽかぽかだぞー!バッテリーもこないだ改造したし、電源もとれるんだぞ!』
in:アンダーボード
『すくなくともミクとは意見があいそうなんだなー!』
in:アンダーボード
「…………」
どうだろう、と青年は考える。
『そんなもんなのかー?』
in:アンダーボード
『ロクはときどきそーやって丸くなるけど趣味なのか……?』
in:アンダーボード
『みんな仲良し、よいことだー!』
in:アンダーボード
逃げた!!!逃げた!!!
逃げちゃった!!!!【スズメ】
性別:男 年齢:16歳
ガタイは普通。身長は170cm前半といった程度。極端までに無口な男。
どこかでメカエンジニアをやっていたらしく、多少の故障は治すことができる。
少しマイペースなところはあるが、それでも誰かが傷つくのはあまりよしとしない。
現代という言葉には当てはまらず、遠い未来からやってきたひと。
どこからか、逃げるようにやってきた。目的は、永久生存権を得る事。
喋る事を極端に忌避している。
自分の思考で声を出す事を、自分の意思を自分の手で他者へと開示することに強い罪悪感がある。【ラビィ】
スズメの肩に乗ったウサギの人形……にみせかけたメカである。
スズメの親友であり、相棒を自称する。
喋らないスズメの代わりに口やかましいほどクソほど喋る。
彼の持つAIプログラムは、スズメの手によっていつでも削除、改変が可能である。---
逃げた 逃げた 逃げちゃった
無責任に大事な事ひとつ言わずに逃げちゃった 逃げるようにやってきて ウサギのように逃げちゃった
見たくないものばかりだったね 聞きたくないものばかりだったね お前の人生ぜんぶそうだったね
母親を殺すほどの妄執で気が狂った父親に舌を切られ
幸福を願った幼馴染の子には裏切られ
大切なものがあった家は汚い大人に踏み荒らされ
最後には家も燃やされてしまって
大切な人達の大切な人が死んだことを伝えられずに逃げちゃった。
何が希望だ。こんなものが希望であって溜まるものか。---
お世話になった人
シュラハト:たくさん見殺しにしてごめんなさい。
アルフィード:信じ切れなくてごめんなさい。
イズミ:伝えられなくてごめんなさい。
ササ:ごめんなさい。
ネイバー・レディ:見落としてしまってごめんなさい。
アレッサ:貴方にも隠し事をしてしまいました。ごめんなさい。
リン:本当に必要なときに手を貸せなくてごめんなさい。
リゼッタ:ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
ダニエル:貴方の期待を裏切ってしまってごめんなさい。
お前にもう、祈る権利なんてないよ。
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皆スズメに付き合ってくれて……ありがとうございました……!