CuraanaNow
あなたの確認するような問いかけに、こくこくと何度も頷いて答えていた。
そして快い返事が返ってきたのを聞けば、やったやった、とまるで小さな子供のように嬉しそうにはしゃいでいたのだが。
「あ……え、えっと、マナナって言います、私の名前……えへへ……」
名前を聞かれて我に返ったのか、少し恥ずかしそうにはにかみながら名を名乗る。
「食べられないシザイよりもおいしいもの、ですからね……楽しみにしてます」
「それじゃあ、これを……よろしくお願いします、ネイバー・レディさん……」
つい先ほど買ったレシピ本をあなたに渡す。
今からもう楽しみにしているのか、マナナはずっとご機嫌そうな様子だった。
in:マーケット
人々に奇異の眼差しを向けられながらも、当人たちは大真面目だ。
両手を上げるあなたの姿を見れば、少なくとも今すぐにこのレシピ本を奪われることはないのだろうと思って緊張を和らげた。
「え、スープを……!? い、良いなぁ……」
ひょっとして、この人はそれなり裕福な方なのでは……と勝手に考えて羨ましいと思った。
決してそんなことはないのだろうけれど、それでも暖かみのある食事に辿り着くコネクションがあるのだろうと思い至って。
「ケーキに、ドーナッツも……?」
続く話の中に出てくる言葉も、名は聞いたことはあれど少女には手も届かぬような代物ばかりだ。
それらの味はどんなものだろう、どんなにおいしいのだろうと想像すると生唾が止まらなくなる。
ごくり、と喉を鳴らせば意を決したように首を振るあなたを真剣なまなざしで見つめる。
「え、えっと! と、取引を……しませんか……?
この本を、お貸しするので……私にも、美味しいものが食べられるように、と……」
段々と声が小さくなりながらも、しっかりと取引を持ち掛けた。
どうでしょうか、とおずおずと様子を伺うようにそちらを見つめて返事を待っている。
in:マーケット
(も、もしかして……
何をすればいいのか、自分で考えろってこと……?)
あなたのおろおろした様子が伝わって、
こちらも変な思い込みをしておろおろ。
傍から見ると随分とおかしな光景かも。
少女が何かをしようと行動する前に、あなたからの質問を受けて少し身構えた。
「あ、い、いえ……!
私はただ、美味しそうな食べ物が好きで……それを見て想像したりするだけで……
まあ、作れたらいいな、とは思いますけど……
料理なんかしたことないし……材料も、簡単に手に入らないものばかりですし……」
この世界で料理の為の材料を集めるのは、恐らくとても難しいことだろう。
だからこうして、見たり読んだりして楽しむものだとレシピ本を捉えているらしい。
「……あなたも、美味しいもの好きなんですか?
料理を作ろうとしていたのですかって、言ってましたけど……作れるん、です……?」
in:マーケット
レシピ本を拾おうとしていると、先にあなたが拾う。
少女の価値観ではそれは相当に高価で稀少なものだ。
このまま持ち去られてしまうことも覚悟していたが、
あなたはそのまま拾ったレシピ本を手渡してくれた。
「あ、ありがとうございます……ごめんなさい……」
少し崩れていた体勢を整える。
申し訳無さそうにしながら頭を下げてお礼と謝罪を
「あの、ええと……何をすれば、いいんでしょうか」
おずおずと尋ねる。
何か助けた見返りを求められるものと思っているのだ
in:マーケット
足を引き摺って進む背中はすぐには見えなくならない
少女は、特に足が不自由なのか杖を使って歩いている
よせばいいものを、逸った気持ちを抑えられないのか
そんな状態のまま買ったばかりのレシピ本を見ていて
「あっ、あっ……」
……うっかり手元から零れ落ちた。
慌てて拾い上げようとするが、
この不自由な身体ではやはりそれも簡単なことでない
きょろきょろと、周りを見ながらもなんとか拾おうと
あなたとも一瞬、目が会ったりした……かもしれない
in:マーケット
「……? えへへ……やっぱりそうでしょうか……
本も、私に買われたがってるような気がして……」
などと、ふにゃり、と笑って変なこと言う少女だった
あなたの物言いにどこか歯切れの悪さを感じながらも
会計は滞りなく進んでレシピ本は少女のものとなった
お目当てのものが手に入ったことにむふ、と満足気に
笑みを浮かべる姿は、どこか気の抜けたような感じだ
「では、私はこれで……ありがとうございます……」
あなたと店主に向かい小さくお礼を言えば去っていく
in:マーケット
「? えっ、と……私、何かしてしまいましたか?」
なんだかおろおろしている人がいるなあとは思いつつ
この少女はそれ以上のことを察してくれなかった……
「あ、はい……ちょっと高いですけど、大丈夫です」
あなたが懐事情を気にして出せなかった量のシザイを
少女はポンと払いそのままレシピ本を買い取る寸前だ
見た所、それほど裕福な生活をしている様子でもなく
どちらかと言えばみすぼらしさすら感じさせる姿だが
それでもレシピ本が欲しい強い理由があるのだろうか
あなたが何も行動を起こさないのなら会計を済ませて
ずるり、左足を引き摺りながら去っていってしまうか
in:マーケット
「あ、えっと、すみません……これ、買いたいんですけども……
はい、それです……その本で、間違いないです……」
と、あなたが悩んでいる間に同じレシピ本を買おうとする少女が現れる。
この時代でこんなものを買う人間など、あまり多くはないはずなのだが、そのあまり多くないはずの人間が現れてしまった。
このままではあなたが悩んでいる内に少女がこの本を持っていってしまうかもしれない……
in:マーケット
ずるりと片足を引き摺りながら、今日も食料を受け取りに。
話を聞いた本物のポテトの味を想像しながら、
やけに味の濃いポテト味の固形食をもさもさ。
「はぁ……」
クラアナの瘴気で致命的な汚染を被ってからというもの、
すっかり探索に出るのに気が引けてしまっている。
このままでは美味しいご飯など夢のまた夢だと、ため息が漏れた。
in:食料提供所
「……本物?」
「えっと、食べた事あるんですか、本物ポテト……」
すぐ傍にいた、自分と同年代くらいの少女のボヤキ。
本物を、という言葉が気になって、声を掛けてみた。
不躾かもしれないが、好奇心には勝てなかったのだ。
in:食料提供所
「ご飯、食べなきゃ……」
ずるりと、右足を引き摺りながら食料提供所に来た。
右手もすっかり不自由だが、杖を持てる力はあった。
以前とは反対側になってしまったのが気持ち悪いが、
まだひとりでなんとかやって来れたのには安堵した。
「うーん、どれにしましょうか……」
酷いことがあったが、泣いても喚いてもお腹は空く。
生きている限りは、それを満たしてはまた減らして、
そういった営みを続けていくしか道はないのだろう。
in:食料提供所
「っ、うぅっ……」
ずるり、ずるり、右足を引き摺りながら歩いてくる。
苦痛に表情を歪めながら涙を流す少女に向けられる、
他の探索者の視線は同情や忌避が入り混じったもの。
同じ探索者として気の毒だとは思うかもしれないが、
汚染されたものに近付きたくはないのが本音だろう。
「あはは……これも、仕方ないこと、ですよね……」
クラアナの瘴気で肉体が汚染されるなど珍しくない。
運が悪かったか、判断を見誤ったのか、その両方か。
今の酷い状況を想って、少女は自嘲するように笑う。
就寝施設の利用申請を終えれば、なんとか横になる。
この右足はもう自由に動かせることもないのだろう。
辛うじて使えそうな右腕も随分鈍くなってしまった。
「…………」
ぐす、と眠るには窮屈な狭い空間に響くすすり泣き。
疲れ果てて意識を手放すまで、それは続くのだろう。
in:就寝施設
「前より全然楽じゃなくなっちゃいました……」
探索が解禁されて、少し潜ってきたその帰りだ。
相変わらず美味しくない固形食を食べて渋い顔。
これからの探索の事を思えばより渋い顔になる。
それでも食料を食べる手は止まらないのだから、
この少女の食い意地も並大抵のものでなかった。
「やっぱり、ひとりで探索は厳しいですね……
うう、美味しいご飯食べたいだけなのに……」
そんな愚痴を零しつつ、不味いご飯をもぐもぐ。
お腹いっぱいになるまで、ずっとそんな感じだ。
in:食料提供所
「うう~…………」
検査着に着替えさせられて落ち着かない様子で
そわそわ、もじもじと挙動不審になってしまう。
結局、審査にやってくるのもギリギリになった。
ちゃんとやるべき事はやっているはずなのだが
心配や不安で先延ばしにしてしまっていたのだ。
(シザイもゴハンも取られませんように……)
(調整されても痛いことされないように……)
(あと美味しいご飯食べられますように……)
まるで神様にお祈りでもするかのよう。
この世界においてはキカイは神に等しい存在で
あながち間違いでもないのかもしれないが……
なお色々と心配しているが少女は低層探索者だ。
不安に思っていることは殆ど杞憂となるのだが、
その事実を少女が知ることは恐らくないだろう。
in:探索者審査会場
こそこそ……
途中で視線があって会釈を交わしたりしつつも、
そのまま去っていったふたりをそのまま見送り。
「……な、なんだかすごそうな人たちでしたね」
深層探索者、などと呼ばれる者たちなのだろう。
低層でシザイを必死に集めて必死に生きている、
自分のような探索者とは一線を画したものたち。
彼女らが何のためにクラアナの深層に潜るのか、
少女にはまるで理解の及ぶことのない世界だが。
「ちょっと、楽しそう、です……?」
楽しそうに去っていく仲睦まじい背中を見れば、
なんだか少しだけ羨ましいなんて思うのだった。
in:廃棄区画
こそこそ……
何やら救出が始まったのを隠れて見ていました。
in:廃棄区画
「ううん、何か……ないでしょうか……」
あてもなく廃棄区画を彷徨う片目隠れの少女だ。
キカイに噛み千切られた左足もすっかり元通り。
しっかりと自分の足で歩けることを確認しつつ、
廃棄されたガラクタの中から掘り出し物を探す。
「…………?」
何やら廃材の山からがこがこ音が響いてきたり、
ぬっ、と何もしていないのに飛び出してきたり。
している、ような……?
どちらかと言えば治安が良くない部類の場所だ。
警戒心を強めてそろりそろり、行動も慎重に……
in:廃棄区画
「みゃ、みゃみひゅるんれひゅか〜!?」
むにむに、為す術もなく摘まれた。
どうしてこんなことをされているのか。
やっぱりわかっていないままなので戸惑っている様子。
身体が不自由な今の状況で抵抗できるわけでもないが。
「はぅ……き、肝に銘じておきます……はい。
こちらこそ、よろしくお願いしますね、まぐろさん……」
むにむにされた頬に違和感を覚えながらも、挨拶を交わすのだった。
in:マーケット
「ほぁ……ちゃんと、くすぐったいんですね……?」
ちょっと感嘆したよう声を漏らした。
あなたはそういうことを伝えたかったわけでは無いはずなのだが……
それからは少女の気が済むか、あなたから強めに注意されたり振り払われるまでそれは続いたことだろう。
「うぅ、そう言われると確かにそうです……
美味しいもののために下の方に行かなきゃいけない時もありますし……」
嗜好品としての食事はキカイの目が届かない場所で提供されるものだ。
必然、そういった場所は治安も悪くなりがちだし、そんな場所で隻脚なんかでいればカモにされるのは明らかだろう。
「あ、はいっ……!それは、もちろん……マナナって言います」
in:マーケット
「んん……柔らかい、ですね……」
振り払われないのを良いことに、確かめるように柔らかい手に触れる。
ふにふにと伝わってくる感触は紛れもなく、同年代の女の子のものだ。
「そう、ですね……全然わかりませんでした……」
少なくとも自分が感じられる範囲では何も違いはわからなかった。
もしもこれで生身の手を触っていたとすれば騙されているのだが、
流石にそんなことをするとも思えず、素直に義体だと信じている。
「あ。ありがとうございます、参考にさせて貰っちゃって。
ちょっと高いですけど、ちゃんと元通りにしようかなと。
この脚だと不便なこといっぱいですしね、やっぱり……
急がば回れと言うみたいですし、美味しいご飯の為にも!」
ようやく決心が固まったようで、あなたにもぺこりと頭を下げる。
実際は一方的に参考にさせて貰ったのに、なんとも図太い性格だ。
in:マーケット
片目隠れの少女。
臆病で気弱な小心者だが、存外に図太く逞しくもある。
食べ物が絡むと大胆な行動を取る事も。
三度の不味いご飯より一度の旨いご飯がモットー。
クラアナの低層でシザイを必死に掻き集めてはお腹いっぱいに豪華な食事を取る生活を夢見ている。
【現在の状態】
一人目の複製体。
右手:汚染欠損。
右足:汚染欠損。
左足:欠損経験あり。構造生体義体に置換済。
プロフィール画像、アイコンは杏仁もなか様より。
NGは特にありません。ログ公開フリー。