CuraanaNow
少年が一人。
探索者としての登録を終え、
管理用ナノマシンの注射跡をさすりながら
クラアナの入り口を睨んでいる。
しばしの躊躇いの後、その中へ飛び込んだ。
in:クラアナ付近
上層から下層に向かって、人形のような服の少年が走っていく。
in:エデンボード
「かぶ? ……かぶ?」
薄暗い区画に迷い込んだ女。
店に並んだ蕪に目を奪われ、その謎の吸引力に引かれてひとつ購入してしまう。
「ウワァ…かぶだぁ…めちゃくちゃかぶだなぁ…」
この場所で初めて目にした野菜をべたべたと触りながら、上の区画へ戻る道を探して立ち去った。
in:アンダーボード
がつがつと固形食を食べていたものの早々に口の中の水分不足で勢いを落とす女。
食事の途中でいそいそと水を入手しに行った。
in:食料提供所
「んだよ検査ってよぉ人の体ベタベタベタベタ触りくさってよぉ~。ハーッやってらんね! やってらんねっすわ!」
探索者審査を終えた女がぶつくさ言いながら提供所に備え付けられた座席に腰をおろし、机の上に固形食をふたつ並べている。
「このやってらんねぇ気持ちを癒すには…、そう、大盛りのチャーハン…いま私の前にあるのは大盛りのチャーハン…焼き餃子もつけちゃお…」
固形食をにらみつけながら、そこに中華の大皿の姿を脳内に描く女。
レンゲを持った振りをした右手を振り上げ、やけ食いを開始した。
米をかっ込むジェスチャーをしながら合間合間に左手で固形食を口に運んでいる。
in:食料提供所
「ウワァァー! ばかたれぇ~~~」
検査を終えた女はべそをかきながら会場から走り去っていった。
in:探索者審査会場
兎耳(飾り)を剥ぎ取られたバニーガールが検査を受けている。
「やめろぉ! 髪をめくるんじゃない! ぎゃあ! やめてください! やめてください! アァー‼」
キカイに慈悲などない。個人的な懇願など無視され淡々と検査が進行する。
in:探索者審査会場
「ケーキ! いいですねぇ。でっけぇ店建ててここいらに豊かな食をもたらしてくださいよ!」
少女の夢を語る声を聞き、軽い調子で相槌をうつ女。声色が本気。
「甘い夢聞いたら甘いもん食いたくなっちゃったな。ヨシ、おまえは今から大判焼き…大判焼きよ…」
手に持つ固形食に語りかけている。自己暗示ののち食事を始めた。
in:食料提供所
「お嬢様が固形食食ってる…えっもしかしてコレ金持ちが食べるやつなの?」
固形食を8つに割ってエアたこ焼きに興じていた女。聞こえてきた少女の言葉を真に受けている。やや離れた位置にいた女には少女の服の継ぎ当てが見えていなかった。
「上流階級の趣味はわかんねぇなぁ…」
in:食料提供所
「私の常識だとこんな馬鹿力出せる義手つくるよりは簡単なんですけどね~」
そう言いながら生身ではない左手を握ったり開いたりする。
「いやでも農業も酪農もやったことねーからわっかんねぇな。えっピザってつくるのめちゃくちゃ大変なんか…?」
ぶつくさとぼやきながら固形食を食べきった。
in:食料提供所
「キカイ様のために命懸けでシザイ集めやってんだからもっといいモン支給してほしいですよねぇ。そう…例えば…ピザとか!」
かじりついた固形食を持つ手を顔から遠ざけ、固形食と口の間に伸びるチーズの幻覚を見る危ない女。硬質な咀嚼音が響いている。
in:食料提供所
「虚無バーガーでーす。お値段シザイほにゃららぶんでーす。口の中の水分ぜんぶ持ってかれまーす。くそったれぇー」
ぼやきながら水をぐびぐび飲んでいる。
「フフ。こんなん無で味付けでもしないとやってられませんわな。イマジナリーフレーバー!」
やけくそ。
in:食料提供所
「う~ん、パッサパサ!」
空になった両手で虚空を丸める動きをする女。
無の包み紙を丸め、丸めた無を投げ捨てた。エアポイ捨て。
in:食料提供所
「これはハンバーガーこれはハンバーガー心頭滅却すれば固形食もまたハンバーガー…!」
ぶつぶつと自己暗示をかけ、両手で小さな固形食を持ち、無駄に大口を開けてかぶりつく女。
心頭滅却などできるはずもなく、パンでも肉でもない食感のそれをもそもそと咀嚼する。
微妙な顔を浮かべながら、それでもジェスチャーを維持して食べきった。
in:食料提供所
「アッ、エアラーメンでごめんねぇ~。みなさまと同じ固形食っすわ」
ジェスチャーを見たのかぼやきを聞いたのか足を止めた小柄な存在に、変に期待をもたせて悪いと思ったためか声をかけておく女。へらへらしている。
in:食料提供所
「固形煮卵もほしいですねぇ~」
聞こえた女性のつぶやきに雑に反応する女。反射で言葉を紡ぎながら現実の食事の味気無さから目を背けている。
in:食料提供所
「ズゾゾー ズルルルー」
右手を箸に見立て、左手は丼を持つジェスチャーで麵をすすっているふりをする女。
合間合間に固形食を口に詰め込んでは再び麵をすすっているふりに戻る。
「ラーメン食いてぇ~」
ぼやきながら固形食を食べ終えた。
in:食料提供所
人形のような服を着せられた少年。
人形ではなく怪物になりたくて飼われていた家を飛び出した。
左腕を異形生体義体に。
右足側、左足側にひとつずつ異形生体義体を付けた。
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イナバラ ウタゲ。
キカイの技術かなにかで紛れ込んだ一般人。
放浪バニーガール(自称)
…の複製体(二体目)
左腕が機械化義体。右腕の手首から先と左足が模造生体義体。
頭の一部にも攻性の改造を施した。
どうにかこうにか上級市民権を購入し、探索者を引退。
自身がとうに複製体になっていることにも気付かないまま、
能天気にやけくそ気味にふらふら生きている。