CuraanaNow
特に何をするでもなく、適当に腰掛けている。
やがて手持無沙汰になったのか、
身の丈を超える大剣を弄び始めた。危険。
in:ブラックボード
「呑気なツラしやがって。」
猫を見て一言。
in:ブラックボード
良いとは言えない見た目の輩でもある。
in:ブラックボード
「"そっち"も"あっち"もだ。」
声が耳に入れば、顎で示す。
捉えていた、その刹那すらも。
「利口だな。
そのくれーが丁度良い。」
対する男もそれ以上の動きは見せず、
施しも気概も渡しはしなかった。
in:ブラックボード
「この辺は訳の分かんねーヤツも居りゃ、
やべーヤツも居っからな。」
「おっかねーならとっとと上に上がんな。」
と、何処へと言うまでも無く虚空へ語り掛ける。
最も男の知るこの場は随分と前のことだが。
虚空は何も語らない。宣告の様でもあった。
in:ブラックボード
「(ガキ、増えたな。)」
大男は鎮座する。
相も変わらずガラの悪い者達の間に。
in:ブラックボード
「久し振りに顔出してみりゃ、
いつも通りか。」
「汚くねーのに勿体ねぇこったな。」
言いつつ、ははーんと腕を組み見守る。
大男でありながら近付こうとしないのは
ブラックボードの人々と同様の思考だ。
in:ブラックボード
「おう。なんとかな。
ガッツリもってかれたもんでよ、
残ったシザイで呑気してんだ。」
ヒラリヒラリと手振りをする
久方振りの大鎧。以前の様な圧力は無く。
「きっちりやってんだろ、今居るってこたぁよ。
俺ァ当分こんなんだが、精々頑張んな。
長くなったな、先がよ。」
in:クラアナ付近
「……。
34万、だぁ?舐めてんのか?
あんなワケの分かんねーもん
置いときやがってよ。」
in:クラアナ付近
「ぁ、――…………。」
けれど、理解した時にはもう既に遅い。
女の身体は男を振り払い、そして己が身を地に放り出した。
それを見透かしていたかの様に残りの男達が近付く。
女は、闇に堕ちた。
暗闇の中で影が蠢く。
助けでも求めたのか、
天へと伸びた腕は小枝が折れる様にすぐに地に堕ちて。
――影は、蠢く。
肉欲の儘に。晩餐の様でもあった。
in:ブラックボード
――怒号と悲鳴が、
ブラックボードを奔り抜ける。
数人の男が一人の女を追う。
女は縋る表情で、
男達は獲物を目前にした獣の様に。
その様は、既に意味を為していない。
「――!」
甲高い悲鳴が発せられる。
女は一人の男に腕を掴まれ、
そうはさせまいと力任せに振り払う。
抵抗のためだけの力は、
女の身に一度は安全を齎して。
in:ブラックボード
「先生、ね。」
鎧がカタカタと音を立てる。
「良い感じになってらァ。
そーだよな、詳しそうだったもんな。」
先刻のやり取りを思い返せば更に笑って。
大鎧は珍しく音を立てずに立ち去っていた。
in:ブラックボード
「ほーん。
中で使えるのが――……。
ああ、キカイだからか。」
だから類似したものがあるのだろう、と納得した。
そして微笑ましくも感じて。ガラにも無く。
in:ブラックボード
「はん、」
兜の向こうで、男は笑って。
「こんなトコで生きてるガキはつえーや。
だってよ、あんちゃん。
払うもの払うつってんだ、
聞いてやんのはそっちの方かもな?」
なんて、茶化してみる。
逞しい者だ。良くやっている。
それは鎧の内に秘めて。
in:ブラックボード
「暇潰し所じゃなかったな。」
へへ、と肩を揺らした。
ガラにも無く聴き入ってしまったのは、
あまりにこの世界と
かけ離れた旋律だったからなのかもしれない。
「――とぉ、いつかのガキじゃねーか。
別の楽器が来たな。」
いつもの喧騒さだ、と。
in:ブラックボード
それが旋律を響かせる間、
男は一つとして音を響かせはしなかった。
僅かでも動けば響く身だ。
それは、男の望みでもあった。
「…………たまげたぜ。
そんなちっこいクセに良い音出しやがる。」
そして、演奏を終えれば漸く口を開いて。
「おめーんとこのも悪くねぇぜ、あんちゃん。」
そう感想を述べて、兜の背面を叩いた。
何処かバツが悪そうだ。
歌、旋律――……そう云ったものに、縁が薄かった。
in:ブラックボード
「――……なるほどな。
コイツは魔法だ。」
その動きを見る。旋律を聞き入れる。
どれもが男には知り得ないことだった。
演奏には、人の手が必要だ。
楽器には、人の手が必要だ。
そんな常識を覆された。
そして、それが奏でる旋律は、
男が知るどの楽器とも、似付かない音色だった。
「ああ?…………ああ、歌か。
そうかもな?」
なんて、思い当たる節を聞き入れて。
男もまた、聴き入った。
in:ブラックボード
「ほー…………?
こりゃどうも。」
説明を受ければ、
存外しっかりと受け取り感謝の言葉を漏らす。
正に巨大な子供なのかもしれない。
「魔法が使えるってことだろ、よーするに。
馬鹿には出来ねーからよ、
俺ン中で考えても利口だぜ。」
うんうんと頷く。
男にとって、魔法もまた特異なモノだった。
ちなみにこの男にその適正は無い。尚更である。
in:ブラックボード
「でん、き――…………。」
ガシャリ、と大鎧は兜を傾げて。
「よく分かんねーが、良いじゃねぇか。
俺には出来ねーからよ。」
大鎧には二人の様な技術は持ち得ない。
故に、賛美する動機は酷く些細だ。
単純な思考故に、それ以外の動機は無いのだが。
「ほー……よくやるな。
まーたしかに、出来上がってくのは
見てるだけでも面白れーわ。」
見学するだけの大男は、
チラリチラリと二人の手元を世話しなく見る。
手持無沙汰が故に気になることが多い。
in:ブラックボード
「おう。
イジメられちまってよ、マジ泣けるぜ。
溜め込んでたら持って来やがったしな。」
ハァ、と大袈裟に体を揺らし溜息をついた。
文句が出る程度。まだ余裕が見られる。
キカイとの交戦の日々もそこまで支障を来たしていない様だ
「ほーん……!
おめーも良く出来てんじゃねーか。」
「光ってんぞ。魔法か?」
男にとって、点灯は魔法の所作であった。
感心した声を漏らす。
in:ブラックボード