CuraanaNow
「お……この時間はこっちの方が雰囲気あっていいなー」
夜更け頃、鈍い足取りで手ぶらのまま徘徊する男が一人。
言動はひどく呑気なもので、博打に興じるニンゲンを見たり、暗い細道を横目にのんびり、ふらふら。
「今日はここにすっかあ……」
通行の邪魔にもならなさそうな隅へ腰掛けると、路上なのも気にせずそのままごろんと寝転がった。小さな欠伸を一つ、適当に景色を眺めながら寝るつもりなのかもしれない。
in:娯楽区画
『赤、ぃ ア、あー ……』
荒廃した世に似合わぬ、
澄みきった鈴の音が数度鳴る。
ちりん、ちりん。
『い、痛ぁ、ぅ。ああ、ぐ』
『……俺の目、が可笑 頭
偽 のか、 どっちだ……』
……ぶつ、と通信が途切れた。
in:朽ちかけの通信機
「……あー」
五体満足生身の男がふらりと現れ、掲載物の一枚を見遣る。
なにかが連々と書かれた遺書。隣には自分自身の名前。
「成程。次は粘るよりさっさと帰るか。
んじゃ、また行くかあ……」
判読できない文字の羅列を解読したのか、
男はそのまますぐに去っていった。
in:死亡者掲載所
「あー、痛ッてえ……まだ下手に奥行けねえなあ……」
がしがしと頭を掻きつつ、隻脚の男は怠い足取りで店へと向かう。
足跡を辿るように黒い影が引き摺られ、長い裾先を追っていった。
「眠……はあ、手当したらまた行かねーと」
in:クラアナ付近