CuraanaNow
「やっちゃった。まさか差し違えるなんて……」
しばらくして、少女は帰還した。
……が、右の肘から先が存在せず、ぽたりぽたりと血を流している。
クラアナ内ではただひたすらに叫んだが、今はいやに冷静だ。
「……義体、買わないとなぁ」
「……大丈夫大丈夫、生きていれば」
「どんな状態でも、私が生きて帰れば家族は絶対に喜んでくれる……ふふ」
初日と比べてどこか吹っ切れた様子の少女はショップへと向かった。
in:クラアナ付近
「…………?」
声の方向を見る。
辛うじて聞き取れた言葉を脳内で何度か反芻して、その内容を辛うじて理解した。
「あっはは、そうですよね。気をつけないと……」
「十層の守護者?はさっき見てきました。しばらくは喧嘩を売らない様に十層を探索しようと思っています」
相手が聞いているかはさておき、返事をする。
その口ぶりから、守護者にさえ挑まなければ安全だと判断しているようだ。
「……眠たそう。ソッとしておいた方がいいかな?」
うーん、と顎に手を置いて考えて。
少女は再びリフトに乗り込んだ。
in:クラアナ付近
「一歩一歩、進めてる……!」
「大丈夫大丈夫、きっと私は帰れる……!」
初探索から数日が立ち、再び少女はクラアナへと潜った。
その成果は今までとは桁一つ違う資材と頼り甲斐のある双剣。
ベテランから見れば大したことのないものであっただろうが、慢心ではない確かな自信を身につけているようだ。
in:クラアナ付近
「『急がば回れ』……ええ、私も知っていますよ、その言葉」
「何かあれば、きっと頼りますね」
相手が発したことわざに懐かしさを覚えるとともに、『頼って欲しい』という言葉に思わず涙腺が瞳が潤んだ。
「ユニ……?ああ、いえ、リアさんですね」
違和感は覚えたが、何か事情があるのだろうと、特に追及はせず。
「えっと、リアさん……わざわざ話しかけてくれて、隣に座ってくれてありがとうございました」
「私、ここでもう少し自分の気持ちを整理します」
「怖いって気持ちと、頑張ろうって気持ちを確認して……何日かかるかわからないですけど、それが終わってから、また探索に向かおうと思います」
「……都合が合いそうなら、リアさんをお誘いしますね」
数分前とは違う、焦点の合った瞳でアナタを見つめた後、柔和な笑みを浮かべた。
in:クラアナ付近
「少しずつ、一歩ずつ……」
復唱して、ギュッと拳を握る。
今はとても怖くて、進める気がしないけれど……
存在を否定されたくない、その一心で決意を固めたようだ。
「協力……してくれるんですか?
ありがとうございます。勇気が湧いたら、ぜひ……!」
アナタが言葉を選んでくれているのは何となく察したようで。
せめて何かを返せるようにと、努めて笑顔を作った。
「帰る場所が……ごめんなさい、こんなこと聞いちゃって」
「どこかに行ってみたいって、アナタがそう思ってるなら……ひっそりと応援してます。私には何もできないですけど……」
自嘲するように笑った後、ハッと気づいたような表情になる。
「──あ、そうだ。まだ名前も言えていないんでした」
「私は井伊田 楽(いいだ らく)って言います」
「……えっと、アナタの名前を聞いてもいいですか?」
in:クラアナ付近
「帰れる……そっか、帰れるんですね!」
「あっ、でも、そのためには価値を示さないと……」
パァッと表情が華やぐが、『価値を示す』という言葉に思わず顔を俯かせた。
こんなところで震えている自分に、果たしてそれが可能なのだろうか……
「えっと、アナタは帰りたいって思ったことがありますか……?」
どうしても聞きたいという訳ではなかったが、沈黙が怖くて更に言葉を続けた。
in:クラアナ付近
「そっか。アレ、取ってこないと存在することも認められないんですね」
他にも聞きたいことがあれば、との言葉に甘えて、もう一つ質問を投げかける。
「上手く探索できるようになって、寿命を延ばしたとして……私は家に帰れますか?」
「あの、えっと、質問ばかりでごめんなさい……!」
in:クラアナ付近
「た、体調……頭が痛くて、と、とにかく気持ち悪いです」
何とか返答を絞り出すうちに焦点の合わない瞳が次第にアナタの姿を捉え始める。
凛々しい女性だと、眩む思考の中ぼんやりとそう感じた。
「……あのアナ、どうしても入らなくちゃダメですか?」
「慣れてきて、大丈夫って思えるようになるんですか……?」
「私は──」
生じる疑問符をぽつりぽつりとこぼして続ける。
冷静になったからではなく、少しでも会話が途切れればまた孤独を味わうように錯覚していたからだ。
in:クラアナ付近
「──わっ、と、隣ですか?」
「い、いいです、よ……?」
身体の震えが止まらない。
本来ならばまともに喋ることができるはずだが、挙動不審な返答となってしまう。
「……」
アナタが隣に座っても、焦点の合わない視線は落ち着くことなく宙を彷徨っていただろう。
in:クラアナ付近
「ぁ……」
視線に気づき顔を上げる。
「えっと……」
「ご、ごめんなさい……っ!」
何かを言おうと試みるも、結局出てきたのは謝罪の言葉のみ。
わたわたと立ち上がって少し離れた場所に移動して体育座り。
「……」
二つの瞳はクラアナの入り口を向いているが、その焦点は合っていない。
探索、と聞こえた言葉にはブルリと身体を震わせるばかりで。
気持ちの整理がつくまでにしばらくの時間を要しそうだ。
in:クラアナ付近
「ぜぇ……はぁ……!」
──しばらくして、少女は帰還した。
「な、なんとかやっていけそうとか思っちゃったけど……や、やっぱっ!やっぱり怖いよぉ!!」
クラアナの中で最も浅い第一層。
怯えながらも物資を整えていく中で僅かながらに“希望”を抱いてしまった。
それは少女に無謀な一歩を踏ませ続けて……
「それに、なんだか気持ち悪ぃ……んっ!」
頭部の汚染という結果をもたらした。
「ん、う……ううぅぅ……!」
普段は髪で隠されている部分を抑えてうずくまる。
『今はここだけで済んでいるけど、だんだん拡がってしまうのかな?』
『治す方法はきっとあるはず……!』
歪む脳内で思考をグルグルと回しながら、しばらくそのままでいただろう。
in:クラアナ付近
「すぅ……はぁー……!」
少女は息を吐く。
右も左もわからないまま探索者登録を終えたばかりの瞳はクラアナの入口を見据えて。
「……やるしかないなら、やらなきゃ」
一歩、また一歩と進んで。
ひっそりと中へと入っていった。
in:クラアナ付近
名前:井伊田 楽(いいだ らく)
常に明るく振る舞っている高校二年生……の複製体。
オリジナルは元の世界で普段通りの日常を過ごしている。
(PLより)(開閉できるようにする方法を忘れたのでしばらくこのまま)
・イラストはSKIMAのキャラ販売にて佐原様より購入いたしました。
・R18/R18G、NLGL等なんでも大丈夫です。どんとこい(PCがどんとこいしてるかはまた別の話)。
・面識なしの即メッセージもOKです。
・平日は19時〜24時、休日は不定期に覗いてます。置きレスになることの方が多いかもしれません。
・いたとしてもレス打つのは遅い方です。