CuraanaNow
「……いざという時は、何なりとお申し付けくださいね。
私は貴方の盾であり、剣ですから。助力は惜しみません」
リーダーが守りたいと願うものが、守るべきもの。
そう考えて、ナダは動いている。
此処を避難所として頼る者達が、今後増えていくのなら
この場の安全を確保するのが、自分の責務だ。
「はい、おやすみなさいませ。
リーダーもどうか、ご無理の無い様お願いしますね。
貴方の代わりは、居ないのですから」
部屋へと向かうその背を、見送った。
in:反キ組織
「お気を付けて。
────闘う者達に、黎明を」
壊しはしないが痛みはする程度の握手を交わし、
ローブを纏った後ろ姿を見送った。
お決まりの文句を、一言添えて。
in:反キ組織
「特段、キカイ以外と争うつもりは無いんですがね……。
向こうが仕掛けて来るのであれば、それはもう
自失探索者となんら変わりありませんから、殺らせてもらいますが」
溜息を吐きつつ、そう続けた。
好き好んでニンゲン同士で争おうだなんて、どうかしている。
そう言わんばかりに。
in:反キ組織
「話は纏まった様ですね。
改めて宜しくお願いします、イズミさん」
改めて微笑んで、必要なら手でも差し出そうか。
力加減は苦手だが、握手で怪我をさせはしないだろう。
多分。
「エデンの外となると、流石に待つより他に
手の打ち様がありませんね。
……いえ。それらしき方と探索中に話した覚えは
ありませんね」
複製体なら、“黒髪の女性”なんて幾度も葬ったが。
エデンの外に居るのであれば、待ち人とは違うのだろう。
特段用の無い限りは、死者の名前が掲示される場所へ
赴く事もないから、その二つを結び付けはしなかった。
──少なくとも、今は。
in:反キ組織
「そうですね。イズミさんに協力の意思があるのなら、
我々が協力しない理由もありませんし」
「待ってなきゃいけない人が居るのなら、捜すのも
一手ではないでしょうか?
その方が帰って来たなら、イズミさんが無理をするのも
ある程度は可能になるという事でしょう?」
要は、無理の出来ない立場になってしまっている現状が
歯痒いのなら、その原因を取り除いてしまえばいい。
ナダは、そう考えた。
「……ま、特段人探しが得意という訳でもありませんので
本当に見つけられるかの保証は出来かねますが」
in:反キ組織
「“留守番役”が増えるというのは、私とはしては有難いですが」
常の様に微笑んだまま、青年は口を開く。
「イズミさんは、探索者をお辞めになりたいんです?
……どうも、そんな感じには見えませんがね。
引っ掛かる事があるのでしたら、マずは話してみては?
迷いを断ち切る、切っ掛けになるかも知れませんし」
in:反キ組織
この男の辞書に、“遠慮”という単語は無い。
否を唱えられないと察せば、黙って話に耳を傾けるだろう。
(──……何もかもが偽物、ですか)
思う所はあるけども、口を挟む場面ではないだろう。
恐らく、本題は此処からだろうから。
in:反キ組織
「ええ、お陰様でよく。
いいえ、謝られるような事ではありませんよ。
置いていただいてる身ですから、このくらいは」
そうリーダーへと微笑んでから、イズミへ向かって。
「私が居ては話し難い事でしたら、席を外しますが」
警護面を考えると、二人きりにさせたくはないのが本音だが。
それで話が聞けなければ、本末転倒だと確認を取る。
ついでに、改めて全員分のお茶を淹れ直すだろう。
in:反キ組織
「おかえりなさいませ。
すみません、お呼びだてしてしまって」
まず一言、謝罪を挟んで。
「ええ。彼が“お客様”です、
自己紹介は、ご本人からしていただいた方が
適切ですかね?」
in:反キ組織
「さてさて、すっかり休んでしまいましたね」
部屋を出れば、まずはジャミング装置のチェック。
動作は良好だ。このまま本稼働という事で良いだろう。
それから、“リーダー”や“お客様”へ幾つか通信を入れ
諸々の雑務をこなす。
それから、リーダーから聞いていたレトルト食品の山へと
歩み寄った。
(支援は有難いですが、一体どなたが……?)
問題が無いか確認して居た所で、表の気配に気付いた。
約束の“お客様”だろう。
表をカメラで確認すると扉を開き、声を掛けるだろう。
「ああ、いらっしゃいませ。中へどうぞ」
そうして以前と同じように部屋へと通し、茶を淹れた。
「只今“リーダー”をお呼びしますので、
それでも飲んで、少々お待ちくださいね」
in:反キ組織
「嫌ですねぇ、歳は取りたくないと言いますか。
……自分が幾つかだなんて、知りませんけど」
身体は生身だから、恐らく20代前半だろう。
本来、歳と言う程の歳ではない筈だ。
寧ろ身体に関しては、鍛えれば鍛えるだけ伸びている。
なら、原因は恐らく────
それでも滞りなく、ジャミング装置は完成させて。
軽く装置のテストを済ませると、宛がわれた部屋へ向かい、
休息を取る事にした。
頭が睡眠を必要とせずとも、身体は疲労するのだから。
機械仕掛けの瞳を閉じる。
視界の端に、歯車が見えた様な気がした。
in:反キ組織
“リーダー”の端末へとファイルを送信し、一息吐く。
今日は、料理(?)までは手が回らないかも知れない。
する事があるのだ。
昨夜、マーケットで買って来た物が入った箱と
廃棄区画で拾い集めた、幾つかのパーツ。
それらを組み合わせて、ジャミング装置を組み立てるのだ。
廃棄区画に使える物など、本来は殆ど存在しない。
──ただ、幾つか例外がある。
その一つが『キカイによって流通を禁じられた品』だ。
所持だけで罪に問われ、また娯楽にも通じない様な品は
そのままの状態で廃棄されている事もあるのである。
例えば、ジャミング装置の重要部品だとか。
本来は、夜の内に組み立てを済ませるつもりだったが、
急な来客もあり、取り掛かりがすっかり遅れてしまった。
幸いと言うべきか、ナダの頭は機械化義体だ。
睡眠を必要としないのでパフォーマンスは落ちないし、
機械の構造を理解するのにも向いている。
「……その筈、なんですけどね」
溜息を吐き、独り言ちる。
最近、如何にも鈍っている気がするのだ。
生身の方が優れていたのでは?と思ってしまう程に。
少なくないシザイをはたいて、メンテはしているのだが。
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in:反キ組織
「すみません。よくおやすみの様でしたから。
“お客様”には、お茶だけ淹れてお引き取りいただきました。
リーダーに会ってお話になりたい様でしたので、いずれまた
連絡もあろうかと。
勿論、此方から接触するなり、アポを取る事も可能ですが」
あくまで、どうするかは一任するというスタンスだ。
「お出掛けになられるんでしたら、後程、彼についての仔細や
同時間帯に“現場担当”からあった連絡についても纏めて、
お持ちの端末へ送っておきますね」
「ええ、守りはお任せを。
……命についても、承知致しました」
いつも通り穏やかにそう言って、外に出る姿を見送るだろう。
「それでは、行ってらっしゃいませ。──闘う者達に、黎明を」
in:反キ組織
「どんなご事情があるか知りませんが、“リーダー”は
私より余程器の広い方ですから、光明には成り得るかと」
要求が呑まれたのを確認すれば、出口まで案内するだろう。
出る前で一度足を止め、連絡先を交換する。
「……ああ、連絡先は私の物をお渡ししておきますね。
連絡いただければ、リーダーのご都合を確認した上で
予定を取らせていただきますので。
私が同席出来るかは、その時次第になりますが」
そうして白んだ空の下に人の気配が無い事を慎重に確認してから
貴方を、外の世界へと送り出すのだった。
「ではいずれ、また。 ──闘う者達に、黎明を」
in:反キ組織
「私は、鏡で私を見ても悲鳴を上げませんから違いますねぇ」
今度は、解った上で茶化した。性格がおよろしくない。
「その場所が何処から漏れたかも、イズミさんの成り立ちも、
私ではなく、リーダーの耳に入れた方が良いでしょうね。
組織の理念等も、私が語り尽くせる自信はありませんし。
今度は、きちんとアポも取っていただければ有難いのですが」
物分かりの良い言葉に、くすりと微笑んだ。
「大した要求じゃないですよ。
この組織の存在と立地と、活動内容の秘匿。その程度です。
ただ──……」
あくまで穏やかに、言葉を続ける。
・・・・・・・・・
「もし、イズミさんが原因で此方が脅かされるような事があれば
あらゆる手を使って、“報復”させていただく事になるかと。
……努々、言動その他諸々にはお気を付け下さいね」
つまり、この場から解放はするが、情報の漏洩は許さないという事。
意図的であろうとなかろうとに拘わらず、だ。
条件を呑むのなら、ナダは貴方を一度開放するだろう。
in:反キ組織
「え、誰です?」
素で聞き返した。
ナダの認識では、高々100層ちょっとしか連れ回してない。
そんな叫ぶ様な事だとは、まるで思っていなかった。
安全はそれなりに確保してたつもりだったし。ナダ的には。
「成り立ち……とは、穏やかじゃないですね。
と言うか、外から見て様子なんて判りませんよ。
観察程度で判られてたら、今頃ガサ入れ待ったなしです」
じ…と貴方を見つめる瞳は、機械化義体だ。
幾ら覗き込んでも、その奥に在る物は推し量れないだろう。
「失礼ですね。帰すくらいはしますよ。
──どうやら、バレると拙いのはイズミさんもみたいですし。
アンダーボード、でしたっけね。貴方の普段の生活圏は」
大変に解り易い脅し文句である。
in:反キ組織
「まあ、見逃すつもりも理由もありませんね。
……おや、聞き覚えのある声だなとは思ってましたよ?
けど、イズミさんって基本的にギャーギャー叫んでるじゃないですか。
普通に喋ってるのを聞いた事の方が少なかったので、
観察してても判らなかったんじゃないですかね?」
或いは、小脇に抱えて運んだのでなければ、
身長や歩き方で判別するという方法も取れたのかも知れないが。
「そうですね。流石の私も、そこまで命知らずではありませんので。
イズミさんが、“うち”に興味があるかも知れないなんて事も
全く想像してませんでしたし。
……それとも、あれから心境の変化でもありました?」
in:反キ組織
「ああ、いえ。お気になさらず。
この時間にアポなしで訪ねて来られる方の方が、非常識ですから」
目の前の客人を、敢えて貶している。容赦が無い。
隠密活動の都合上、夜遅くなる貴方とは違うのだと言わんばかりだ。
身内贔屓が強い。
「それはそれは、きっと皆さん喜びます。楽しみにしてますね。
どうか、くれぐれもお気を付けて。
────闘う者達に、黎明を」
そう返すと、此方もまた通信を切るだろう。
in:反キ組織
フードを取った姿を見て、ナダはそれはもう大きな溜め息を吐いた。
「……その慎重さがあって、どうして往来であんなに喋るんですか。
使い所、完全に間違ってますよ。
私に消し炭にされるとは思わなかったんですか?」
酷い物言いだが、通常運転である。
「と言うか、あの気取った面白い口調何なんです?
役者や諜報員には、完全に向いてませんね」
直訳すると、「演技がド下手糞ですね」だ。
そのド下手糞演技を見抜けなかったのは、自分もなのだが
他人への関心が薄いのだから仕方ないと許している。
要するに、自分に甘い。
in:反キ組織
「ええ。それが私の役目ですから。
まあ、四六時中居る訳でもないですけどね」
さっきも、買い物に出ていた訳で。
「今の所、私は伺ってませんね。
引き篭もってる都合上、情報収集能力に長けてはいませんし
まだ検査も始まったばかりですから、単に私の耳に
届いてないだけかも知れませんが」
ナダ自身も、まだ順番が回って来てないので検査に赴いてない。
上手く切り抜ける方法があればとは思うが、強さ的には五分五分か。
「お力になれず、申し訳ありません。
何か判りましたら、なるべく速やかにお伝えしますね」
in:反キ組織