CuraanaNow
*抽選の結果。*
*母とは大きく違う地で。*
*不自由はなく暮せるらしい。*
「良かった。」
*子供は再び"楽園"で、暮す権利を得た。*
in:エデンボード
*子供は考えた。*
*考えて考えて考えて考えて、*
*ここへ住むためのチケットがまだポケットに入っている事に気づいた。*
*…………。*
in:エデンボード
*審査に出向いた後の子供が神に縋りに来た*
*幸か不幸か、まだ先祖との縁は切れないらしい。*
in:宗教施設
*検査着を着て順番を待っている*
「何も……機械様方に逆らう様な真似は……」
「ぼくは、生きられれば、それ以外望まず……」
*ブツブツと呟いている。*
in:探索者審査会場
*エデンボードの一角で座っている*
*昔自分の先代を奉っていた男が近寄って来てはしきりに何か話している*
*面倒だったので無視をすれば何か声を潜めた虫のいい話で、金は融通するから家へ来ないかと誘うものだから*
「ぼくよりも、先代の方が貴女に会いたがっておられると聞いています」
*と、潜伏場所も含め、母親を売っておいた。*
*まだあの人もうつくしいらしいし、信者もそう、ちらつかせる程の財力があるならば、其方の方が誑かしやすいだろうから。*
*ぼくがついて行っても、碌な事にはならないだろうし*
*子供は今も、ベンチに座っている。ぽりぽりと物を食べながら*
in:エデンボード
*子供は祈らずに長椅子に座り込んでいる。*
in:宗教施設
「生存権は見ての通りで……。」
*と、門番をしているらしいキカイに照会してもらう。*
「有難うございます。」
*暫くの間が空き、通れた。*
*もはやこの街に住めるようになるのも、時間の問題なのだろうか。*
「母様……」
*……は、エデンの端も端、いつ切り捨てられてもおかしくない場所で静かに息をしているらしい。*
「……。」
*シザイと言う名の武功を上げ続ければ、"それ"とは別の場所で暮らせるだろうか?*
*子供は、エデンに拵えられたベンチの上に座って、考えていた。*
in:エデンボード
*10。20。30。40。50。60。70……。*
「80階層。」
*キカイを屠っては価値あるシザイを引き出し、*
*汚染した者を見れば屠って価値あるシザイを探し求めた*
「……あと、ちょっとで、」
「永久生存権が。」
*……天国は、地獄の先にあるらしい。*
in:クラアナ内部
*ばさりばさりと敵を倒して先に先にと歩んでいく*
*この足が最後にたどり着く先は、永住の都なのだろうか。*
in:クラアナ内部
*子供が固形食を受け取っては黙食している*
in:食料提供所
*子供は食料提供所の方へ歩み去った。*
in:マーケット
*子供は体に傷を負うとかりそめの生体に縋った*
*異形になり果てるのも、機械の腕を得るのも、*
*子供の宗教論に反するからであった。*
*お蔭様で子供はずっとこのまま子供のまま。*
*左腕の一部を失おうとも、*
*頭が吹き飛ぼうとも、*
*子供は"子供"の思想を保ったまま生きられていた。*
「生存権を」
*手持ちのシザイを見た*
*……もし、永久生存権に、手が届く様なことがあったら。*
*エデンに篭る親らも、"神"と呼ばれた祖先も、教義も何もかも置き去りにして、*
*一人で沢山贅沢をして暮らそうと思った。*
in:マーケット
*子供が固形食を手に取っては無言で齧っている*
in:食料提供所
*幾らか間を置いて、ぽつぽつと*おなかが空いた*という言葉が聞こえる*
in:朽ちかけの通信機
「信ずるものは……」
*ぽつぽつ呟きながら宗教施設の方へ向かって行った。*
in:メインボード
*黙祷を捧げた。*
*対象のある祈りだった。*
in:死亡者掲載所
「祈らねば、神にすがらねば」
「やってはいけないことがらも、この世にはありますから」
「祈らねば。」
*小さな声に小さな独り言を返した。*
*祈っている。*
in:宗教施設
*祈りを捧げている。*
*明日もこの立場のまま、平常に過ごせます様に。*
*高きを見て目指して足元をすくわれない様に……*
*神の子の子孫自らが訓えに逆らわぬように……*
「お見守り下さい……。」
*子供は祈りを捧げている*
in:宗教施設
*子供が固形食を受け取っては黙食している*
in:食料提供所
「…………………。」
「こんにちは。」
*彼は昨日会った彼と違う彼だろうか。*
*武器を手に取った。*
*死ぬ気は毛頭ないからだ。*
in:朽ちかけの通信機