己がボロ雑巾のように成り果てる未来など想像してもいなかった。
■探索日誌:Data_00
ぼくはクラアナの低層でシザイを稼ぎ命を繋いできたごく一般的な探索者だ。
ただしぼくは美しい。そのことが"無二の価値"であることは言うまでもない。
今までは、そう……弱くて醜くみじめったらしい極低層の探索者を相手にシザイを稼いできたが、そろそろ自分に見合ったいい暮らしを望んでもいいだろう。
武器を手に、昨日より一歩奥へと踏み込んだ。
■探索日誌:Data_01
なんだ! 有象無象の探索者たちが言っていた
「暴走キカイの恐ろしさ」というものも大したことはないじゃあないか。
ぼくは今日、1~2匹もの暴走キカイを華麗に打倒し、かつてないほどのシザイや武器を手に帰投した。
己の才能と美貌が恐ろしい!
■探索日誌:Data_02
うぐあッ うがわッ
あ゛あああああああああああああ゛あ゛あ゛!!!!!
痛い……、痛い、いたい、熱いあついあつい!!!!!!オオオオオオオ
おち 落ち着かなければ。ぼくの右腕……。ぐすん、うぐっうぐっうう…………。
─今日はクラアナの2層へと突入したのだった。1層ではぼくの実力に見合わなくなったと判断したためだ。
そこで遭遇した……いや、目視したときにはアイツは既にぼくの右腕を持っていて……取られたというよりは穿たれたような…………ううううう!!!!
ぼくの美しき右腕。この人生を片時も離れず共にしてきた相棒がもうここにない。
義肢!? このぼくに醜い機械の腕なんてあり得ない! しかし模造生体パーツは中々に値が張る……。
これからどうしよう。少し、休んでから考えることにする……。