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No.321 吾畑
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age:28
sex:男
height:170cm
weight:61kg
Trend:理由があれば
Favorite:──
Hate:すべて
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じゃあ、な
【Battle_Log】
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 読み方は「あずはた」。
なんの変哲もない会社員。 ?


   バックパックには身に覚えのない小型のハンマー。
腕には映像データが出力も入力もできない、故障した通信端末。
このゲームについて書かれた紙切れ。


「願い……」
「そのために他を蹴落とせって?」
「……趣味が悪いことで」


 パンフレットと心ばかりの食糧。
エンゲージリングと、ナイフ。


「役に立たないものばかりで、肝心な薬がないとか……笑えてくるなぁ」


  「特別な力、ね」


 アナウンスの声は、参加者たちが力を持たないから与えてやると言っていた。
しかし、いざあてがわれたその力とやらはどうだ。
これでどう他の人間を蹴落せって言うんだ?


「……はあ」


 頭が痛む。
主催側からすれば、見世物として醜い派手な争いを望んでいるはずだ。
全くそんなものを期待できない力とやらをわざわざ寄越してきたことに、何者かの作意を感じた。
 他を凌駕する圧倒的な力が欲しかったのかと問われればそれも違う。
お前にはこれがお似合いだろう。これを望んでいるのだろう、とご機嫌に演説でもされているような気がして、
有り体に言えばそれにムカついているのだ。


 そうこう考えを廻らせてみたところで、
能力を使っても使わなくても盤上に立ってしまった以上は相手の思う壺なことに変わりはない。


「ならもう……なるようにしかならないか……」
「…………はあぁぁ」


 得体の知れない胡散臭い書類にサインなんてするものじゃない。
この年になってそんな当たり前のことをリマインドしたくなかったよ。俺も。


   狼がいる。遠吠えが聞こえる。そんな声をいくつか聞いた。

 ざわめく周囲をBGMにして、実家で両親が飼っていた犬のことを思い出した。
ろくに世話などしていなかったのに、自分にも尻尾を振り腹を見せ、懐いてきたあの犬を。

 俺はあいつのことが嫌いだった。
あいつだけではない。
人間のような欲やしがらみがない無垢な動物が嫌いだった。

 昔から、呑気に人間を信頼し、尾を振る姿を見ると無意識に拳を握りしめていた。
実際に手を出したことはない。
けれど、やつらが無垢であればあるほどに、それを思い知らされるたびに、
耳を引き千切り毛を毟って尾を踏みつけ目玉を抉り腹を蹴飛ばしてしまいたくなる。

 嫌いだった。
やつらよりよほど汚らわしく欲と悪意にまみれた人間よりも、
それに気付かず染まらない、いつまでも白いままのあいつらが。

「……一段と、きついやつが……きたなあ」


   体と頭を休めている間に、またなにかあったらしい。
野晒しで寝ていたので若干腰が痛い。

「……バカばっかりだ」

 殺すやつも、自分を傷付けて死ぬやつも、人を助けるやつも、
騙すやつも騙されるやつも、人間と世界は手遅れなことに気付かないやつも、
それが真実だとしか思えなくなってしまったやつも。

「なにが……そんなに、お前たちを駆り立てるんだ」
「どうして、俺は……」

 ……まだ眠り足りないのかもしれない。
だからきっと、こんなことを考えるのだ。
頭はずっと痛むけれど、辛抱強く眠りへ誘う波を待っていよう。
行き着く先のない自問自答など、なんの価値もない。


   動物を殺した。

 二度、三度と繰り返すうち、手を汚し殺すことに感想を抱かなくなった。
それがとても、言いようもなく気持ちが悪かった。


  この短期の間に遠吠えを5度以上は聞いた。
狼か、それに近い野生動物だと思っていたが、
周りではほとんどが人狼だと言う前提で話が進んでいた。

 全域通信の情報を拾う限りでは、吸血鬼も複数いるらしい。
それが不安を煽るためのデマでもなければ、いよいよ現実味がない。

 人狼も、吸血鬼も、"親"が"子"を増やして勢力を拡大していると言う。
本質的に弱く、欲にまみれているから、簡単に身に余る力や快楽に呑まれる。
それを振るって万能感や高揚感を得るために、一度味わった蜜の味を際限なく求める。
 そんなやつらが、そうなる潜在的狂気を孕んだやつらが、世の中にははびこっていることなんてわかっていた。

「……俺だって例外じゃない」

 わかっていただろう。
いまさら、失望することなんてない。
希望なんて最初からなかったはずだろう。

世界はもう、どうしようもなく穢れていて、誰にもどうにもできない。
だから俺は否定も肯定もしないし、変えようと動くなんてこともしない。
その中で無邪気に笑えるのは、楽しめるのは、
堕ちきったやつか、見えていないフリをしたやつか、重大な欠陥に気付かず、本当に知らないやつだけだ。


■■■■ ■■■■ ■■ ■■■■■■■■■■■■■


「……いま、なにを、?」

 頭が、いたい


  近くにいる人間に聞かれる恐れのある場所で、夜通し話し声がする。
前日に眠りすぎたせいか、なかなか眠りの波が来ない。

 バカ女が殺した女の、家族やら知り合いやらの声だ。
彼らは大切なものを傷付けられた"落とし前"をつけたいのだろう。

 俺からすれば、バカ女も殺された女も、どっちもバカに違いなかった。
過剰防衛もとい憂さ晴らししたやつも、
相手がどんな人間か、どういう状態か見極めず他人の神経を逆撫でしたやつも。
「殺した方が悪い」なんて意見は、ただのいいこが決めた"ルール"だ。
激情して手をあげる方がおかしいんだから、
糾弾したって相手の繊細な部分に触れたって悪くないだろうってやつらも十分おかしい。
むしろ、今回の場合好きで得たわけでもない異能の制御が出来ずに
正常さを失っていたと言う点で言えば、まだそっちの方が同情できる。
そこに私怨も加わったのでイーブンになってはいるが。

 この島は命がひとつではないからそんな意見が言えるのだろう。
そういう言葉が返ってきてもなんら不思議ではないが、あいにくこっちは大真面目だ。
 すこし冷静に相手のことを考えていれば仲の良い相手が侮辱された気持ちがわかったかもしれない。
 すこし冷静に相手を見て発言していれば殺されずには済んだかもしれない。
他の動物よりも"思考"に長けた生き物に生まれた癖に、そんなことも考えられないやつらに苛立ちを覚える。
それならいっそ思考なんて持たなければよかったのだ。
人間なんてもの、存在しなければよかったのだ。


 このままいくならば恐らく、穏やかに事は進まないだろうと予想できた。
被害者側が話し合いに持って行くとしても、バカ女がバカなままならばなにも変わらないだろう。
お互い恨みを持つな、なんて話じゃない。負の感情を持つのは人間として当たり前だ。
しかし、そうなる前にどうにかできなかったのか?とは思ってしまう。
冷静さを欠いてトラブルを起こすのも人間だ。
けれどそれならば、自分のその人間性も認めて相手ばかりを責めるなと思う。

 彼らの話を聞いていたからと言って、
彼らよりもいくらかは話したことがある"あちら側"の肩を持ち、あらましを伝える気もない。
あくまで、俺はどちらの味方でもないのだ。
傍で聞こえたことを、起きたことをただ見ているだけ。

 ……あまりに腹が立ったら思わず口を出してしまうかもしれないが、……それだけだ。
"あれ"は例外だったのだ。
よかったじゃないか。親切な人間の繋がりがあって。助けてくれる家族がいて。
だからお前たちには俺の助けは必要ないんだろう。



  雪がふっている。
肩が震える。暑さよりも寒さの方が苦手だった。
これも、誰かの"力"のようだ。
端末に時間が表示されているが、これをわざわざ止めるために殺人を犯す、なんて者はいないだろう。
……いないだろう、と思う。
殺傷能力のある力ならまだしも。
これは、避けることのできるレベルだ。
 
 今日は……なにがあったんだったか。
揺れる濡れ羽や、少し恥ずかしい他人のヒミツ。
ついていけなかった色恋の話。素っ頓狂な幼女。
見知った顔と鍋を囲む光景。
気の抜けるような、平和なそれら。

……それだけを見ていればよかったのに、けれど、


 思い出してしまった。

食い散らかされて、ほとんど頭だけになった死体。
力に怯えるただのちいさなこども。
オトナにさえも涙を流させる、この島の現状。
耳触りな声。嘲笑うような声。貶める声。無神経な声。
  声。 声。 声。 声。

 ……ああ 寒いな。
けれど、胸と頭は、火が押し当てられているように熱い。
苛立ちが。苛立ちが全身を支配する。
いくらかは吐き出したはずなのに、まだ足りないと唸る。

 虫唾が走る。
辺り構わず言葉をぶつけそうになる。

抑え込んでいた。
抑え込んでいるのだ。これでも。

本当なら。
アイツらが、わからねぇやつらが全員わかるまで。
ぶつけ続けて。ぶつけ続けて。 ぶつけ続けて。
それで。

 ・・・──『それで』?



  自殺。または死の危険がある賭け。
自らの命を捨てるのは、愚かな行為だ。
それは、俺もわかっているし、バカだと思う。

 しかし、そこに覚悟があったならば。
生き抜いてみせると言う覚悟も、犠牲を伴う死を選ぶ覚悟も、覚悟は覚悟だ。
遺したものが、それを見た周囲が、死に関わったものが、
傷付いて悲しむのを理解した上で、その姿を想像出来た上で。
それでも尚、目的のために死を選ぶ。
それは覚悟と呼べるものなのではないだろうか。
関わりのない人間に、その覚悟にケチをつける権利など、どこにあると言うのだろう。


 例えば。
自殺した人間に対して、家族や友人がそれをどうしてだと責める。
 例えば。
電車に乗っていた乗客や、鉄道会社が、投身自殺に対して文句を言う。
 例えば。
復讐のために仇討ちに来た人間に対して、
お前が向かってきたからうっかり殺してしまったじゃないかと憎い敵が吐き捨てる。


彼らのようなものには、口を出す理由がある。
しかし、全く無関係な直接影響もない、ただ何かを介して眺めていただけのような人間が、
覚悟の上で死を選んだ人間に対して。その関係者が見るかもしれない場所で。悪態をつく道理があるだろうか?

 覚悟があったかどうかは当人や関係者しかわからないから仕方ない?
死の知らせを見て不快になったから、私たちにもなにか言う権利はある?
 そんなわけがあるか。
口を出さないことだって選べるのに。公にならない場所でひっそりと感情を残すことだってできるのに。
わざわざ発信をして、聞こえる場所で関係者の神経を逆なでするようなことをして、なにがしたいのだろう。
関係者がその言葉で傷付いても構わないと本気で思っているなら、軽蔑こそすれそれ以上なにかは言わない。

 けれど、生半可な。なんの思考も介さないまま言っていると言うならば、そいつらの方がよほど愚かだ。
そんなやつらに覚悟を決めた人間を責める権利などない。

 そんないちいち覚悟など持てない?発言すべてに責任など持てない?
それならば誰かを愚かだ間違っていると罵るのはやめてしまえ。
ガキならばガキらしく、善悪など語らずに自分の好きなものの話でもしていればいい。
オトナの真似事がしたいならノートにでも書き殴って自分を整理し、経験を積めばいい。

 死に口を出すな。五月蠅いんだよお前ら。耳障りだ。
そう思うやつは俺ひとりじゃないんだ。
ひとりだけにじゃあ見なければいいなんてのは通じない。
じゃあお前らも喋らなければいいんだ。

 静かに 静かにしろ。もう十分なんだ。
お前らがそういうやつだって、そんなやつらがいくらでもいるんだってもう知ってるんだ。
もうわかっている。何度も 何度も 何度も ──しつこいんだよ
これ以上どうわかるって言うんだ。これ以上なにを知れって言うんだ。
もういい もう


  夢を見ていた。

陰湿なイジメを受け学校に来なくなったかつての同級生。
社会に適応できずに心を壊して退社した、会社の後輩。
粘着的なストーカーに悩まされていた、部署移動した会社の同僚。
他人の心ない言葉に傷付いた、不注意の事故で子供を亡くした近所のシングルマザー。
徒歩での通勤中によく目にする、酔っ払いに絡まれ足を悪くしたと言うホームレスの老人。
まだ娯楽をみつけようとしていた時に知り合った、孤独を嫌う薬物中毒の青年。
──他にも、たくさんの人影。

それらがじっと佇んで、こちらを見ている夢だ。
ただ、見られているだけの夢だ。

彼らに共通していたのは、誰も俺とは、多くの時間を共に過ごす、家族に似た仲間でも友人でも恋人などでもなかったこと。
ただ顔を知っているか、名前を知っているか、たまたまそこにいただけ。

……行動する正義感があれば、すこしは彼らを楽にしてやれたかもしれない。
しかし、そうはならなかった。
しても、話を聞く程度だった。
彼らがそのあとどうなったのか、俺は知らない。
追い詰めた側への苛立ちがあるだけで、
彼らに大きな影響を与えてまで救おうとしなかった。
彼らの心に、寄り添って支えてはやれなかった。
彼らにもまた、どこかに甘えや隙があったと思ってしまう俺には。

 あまりに、苦しむ人間が多すぎたのだ。
身近な存在以外にも、それはどこも同じで。
その全てに、自分が関わることなどできなかった。
俺も、嫌気がさすほど間違いなく人間なのだ。
確固たる信念もないふらふらとした人間が。
無責任に彼らを受け入れ、支え合い、守ることなどできなかった。

 俺は見て見ぬフリをした。
他人だから?巻き込まれたくないから?怖いから?
……いいや。一番は、俺に生きる意志がないから。

 共に過ごす時間が多くなるうち、彼らはそれに気付くだろう。
あるいは、気が付かなくても。
 心から笑い合うことができない。楽しみを共有することもできない。
 愛し合うこともできない。同じ目線で寄り添うこともできない。
それでは、彼らに失礼だと思った。
真っ当に人を好きになって、信頼して、楽しみを見出して、やりたいことも見付けられる彼らに。
表面上だけで。嘘を吐いて、本性を隠して、傍にいることもできただろう。
それをしなかったのは、俺に問題がある。
立ち直らせることができたかもしれないことをしなかったのは、俺が薄情だったからだ。
それを指摘され、それでも助けてほしかったと嘆かれても、罵られても、文句は言えない。
身勝手だ自己愛の塊だと責める権利も、理由もない。
彼らには彼らの、自分を守る権利がある。
なにが正しいか、ではないのだ。それは当然のことだった。

 なにも変えられない。
俺が本当に。いちから変えたいものは、手には負えないものだ。願ってはいけないものだ。
ああ、大丈夫さ。わかっている。


  女王様だ豚だとのたまいながら、裏では涙を流す一色谷。
守りたいもののために弱さを変えたいと言うディー。
最初の印象こそ最悪だったアキハ。
美澄は……印象はさほど変わっていないが。

彼らはそれぞれ、強さを持っていて。あるいは強さの光明が見えていて。
人間すべてがこの強さを持っていれば、まだマシだったのではないかと。
そう思わずにはいられなかった。

 けれど、それでも。
そうではないことはわかっているから。
彼らが、……ここで関わったやつらが。どうか。
心ないものに傷付けられることがないようにと。
道半ばで目的を達成できずに、悔いることがないようにと。
らしくもなくそう願っていた。
こんな世界で、そんなこと。
叶うわけがないと思いながら。
それでも、願うことくらい許されたっていいだろう。


 俺が。
願い事はなんだと問われた紙に書いた文は。

 『消えてくれ』

──すべてに、思考に、人間に、自分に、世界に。
消えてほしかった。
すべてがまっさらになれば、そこには心の痛みなどないのだと。
傷付くものも、傷付けるものもいなくなるのだと。
そう思っていたから。

 いまも、その願いがなくなったわけではない。
その願いも持ちながら。自分の価値観で人を選び、幸福を祈っている。
自分もまた身勝手で、あらがいようもなく人間で。
そんなこともわかっていて。

 なにか得られたものは、なかったかもしれない。
わかっていることばかりだった。
それを、また再認識させられただけだ。
……ただ、ひとつ。
手には。糸で編まれたストラップがおさまっていた。
つたないけれど、容易に千切れないほど力強く。まぶしいそれは。
どこか、俺が憎しみを抱かないヒトの形に似ていて。
『それを忘れるな』、と 念押しされているようで。

「……わかったよ」

こどもをなだめるように、困りつつもわらってしまっていた。

 "生きたい" とは。
やはりまだ、思えないけれど。
これを見ていると、すこしだけ。痛みが和らいだ気がした。


  最終日を越えた つぎの日。
周りからは人と人の談笑が聞こえる。
そこには、憎しみや恐れ 貶めるための謀りや驕りは、いまはないように思えた。

 アキハが酒場を開いているらしい。
恐らく、この辺りにいた人間も、それ以外も。集まっているのかもしれない。
──そう 思って。
俺は、ここから離れていった。


 一週間。
激動の日々のようで。こうして終わってしまえば、一瞬のこと。
"あの森"は。けして、家でもやすらげる場所でもなかったが。
たしかに、あの瞬間だけは 他にとって代わることのない。ただひとつのものだった。

 それを 忘れることはない。
船が目的地に着けば。彼らに、もう会うことはないとしても。
俺が俺を失うそのときまで きっと覚えていよう。
どれだけ、影に潜む泥が、黒が 色濃く見えようとも。
それが この世界から消え去ることはないのだとしても。
彼らのその先は、俺には知ることなどできないけれど。
この瞬間、この場所にいた彼らを。

 仲間でもなかった。
友でもなかった。 恋人でもなかった。 親でも、こどもでもなかった。
憎む相手でもなかった。 生きる力に変えられるほど、守りたい相手でもなかった。
そんなことを言えば。彼らを裏切ることになるのかもしれないが。

 けれど、俺にとっては 彼らは"個"だった。
それは。ひとつのものとしてそこに在って。
それは。ひとつのものとして力強く根付いていて。
それは。俺がいないとて崩れるようなものではないと思えた。

 それでいいんだ。
そうあって、お前たちはお前たちであればいい。
理不尽や悪意などもすべてはね飛ばして、自分を保っていられれば。それで。


 だから。じゃあな。
もうしばらくだけ。船で共に過ごしでもしたら。
それで さようならだ。




彼は 人間が嫌いだ。人間である自分も嫌いだ。世界そのものが嫌いだ。
命を粗末に捨てようとは思わない。
しかし、どうしても生きたいと思えるようなものもない。

 趣味や特技のひとつもない。好物らしい好物もない。
酒に酔うこともできない。人を愛することもできない。
なにをしてもどこかでは虚しく思え。

 深入りを避けるために一歩引いて。
けれどそれでも腹の立つこともあって。
作り笑いと皮肉と、憤りの言葉を相手にのせて。
それさえも、やはり虚しく。
熱が過ぎ去れば抜け殻のようになっていた。

 俺はもう、それは長いことずっとそうで。
たぶん。この島を出たあとも、それは続くのだろう。

 けれど。衝動で我を忘れそうになった時。
引き戻そうとしてくれるものは、できたと思いたい。
自分にどこか。一線を越えてしまいかねない危うさがあることに、薄々気付いていた。
いつかそれを、なにかに。誰かに向けてしまいそうで。
その不気味な感情を、隠し込んでくれるのではないかと。
汚いものが見えないように、鍵をかけてくれるのではないかと。
そう思いたかった。
そうであってほしかった。
そうでなければ── 台無しになってしまう。


 身を潜め、そのときを待つ穢れから。
 遠ざけてほしい と。
 縋るように なにかを握り込んだ。




顔を見て、覚えた 235 一色谷。覚えてるから、覚えてろよ。
181 美澄。これからもうまくやれよ。
162 ばあさん。血圧には注意してほしい。
169 リァ。馴染めるか心配。
305 ミハイル。平穏に暮らせるといいな。
203 アキハ。浮気しないように見張っとけよ。
242 人間のこども。オトナになれるだろうか。
139 白いこども。染まらなければいいが。
88  レイジュ。気遣ってくれた。
159 フリップ。マカロン。
100 ルル。一色谷の仲間。
36  眼鏡。ご近所のひとり。
81  眼鏡の女。悪いことはしてない。
208 ディー。糸で編まれたストラップを貰った。ありがとう、お前は強くなれるよ。
68  関西弁の女。忙しない。
109 マシロ。ゆるい。


接触順。声は拾ったけど顔は正面から見てない人は記載していません。



 ▼PL▼
バディ:未/RPの流れ次第
恋愛的展開にはならないと思います。
スカ以外NGなし/不穏、巻き込みも歓迎