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No.136 緑目の怪物
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age:????
sex:Female
height:173cm
weight:-kg
Trend:理由があれば
Favorite:-
Hate:-
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ロベリアの花が咲いている。
【Battle_Log】
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異能『緑色の眼の怪物』
体の一部が不可逆的に変化する。
恋人らしくあろうと塗り固めた偽りの具現化。


怪物は身体に抑え込まれたまま死んだ。
彼女が何者かを傷付けることは、もう二度と無い。


エピローグ

結局の所、人生にコンティニューは無かった。

"フタハナ"になればやり直しが効いたのかもしれない。
でも、僕は僕だ。どう取り繕ったところで、空っぽの人形でしかない。
繰り返した所で、勇者が世界を救う物語の様にレールの上を歩くだけ。
死体を探さなくたって、運命という名の列車に轢かれて死んでしまう。

今日も悲鳴が聞こえる。耳を塞いだって隠れたって、それは襲い来る。
身体は傷付かなかったとしても、昨日笑って話した相手が明日には死ぬか狂っている。
狂わない筈がない。秩序のある世界から、突然無秩序な戦場に送られたのだから。
そう考えると、僕は既に狂っていたのかもしれない。
普通を演じることは、呼吸と同じくらい得意だった。
少しだけ変わった瞳を褒めてもらえたっけ。

島に強烈な日差しが差していたとき、初めて『彼』に手を伸ばした。
とても怖かった。またあの日の様に拒絶されて、
そして取り返しの付かなくなった肉の塊を見ることにならないだろうか?
僕より少し背が高くて、僕より少し体温の低い『彼』の身体。
腕の中で感じた温もりと鼓動を忘れることはない。
僕と似ていて、それでいて正反対な生き方。
僕でも人を助けていいんだ、なんて思っていた。

獣の遠吠え。蝙蝠の羽撃き。森の中で息を潜める。

繋がりは途絶えては紡がれを繰り返す。
『彼』が離れたとしても、最後にはここに戻ってくる。それが幸せだった。
愛と呼ぶにはあまりにも醜く、暗かったけれど。

羽撃きも、遠吠えも、日に日に増えてゆく。
友人同士だった人々は、互いの首筋に噛み付いていた。
無力な者の絶命する声。鉄錆の臭い。
廃墟の中、薄暗い病棟に蹲って眠る。
外よりもここの方が、血の通った人間が居る分だけマシだった。
そうして日々を暮らしていた。今は、愛すべき英雄が居るのだから。
英雄は僕を救ってくれるだろうと願っていた。

そう思っていたのは、僕だけだった。
明確な拒絶。不快なものを見る目。
嗚呼、あの時と同じだ。彼女も、そんな目をしていた。
苦しみは分かっていた筈なのに。
英雄は人を助けると信じていたのに。
僕と君なら、どんな悪人でもやっつけられると思っていたのに。

わからない。――わからない。
僕は何故、僕自身を誰かに救ってもらえると信じていたのだろう。
どうして彼は、私を特別に思ってくれないのだろう。
どうして僕は、こんなにも消えてしまいたくなったのだろう。

僕はその時、ここで死んでしまおうと思った。
そうすれば、きっと『特別』になれるだろうから。
醜い打算に反吐が出る。

残しておいたカロリーブロックを、彼女の荷物に紛れ込ませる。
二人で毒を受けて、生き別れにならないようにと準備した解毒剤も。
花があればもっと良かったかもしれない。
でも、僕はそこまで運が良いわけじゃなかった。

廃墟の瓦礫と鎖を身体に巻く。
左目が燃えるように痛い。身体の中で、蛇がのたうち回る。
生きていれば他の道だってあるかもしれないけれど、
死んでいれば何も考えずに腐るだけで済む。

一歩ずつ、水の中へ歩む。
嫉妬に燃える身体を、濁った水が少しずつ冷やしてゆく。

英雄が本当に英雄として成功すれば、僕は『彼』の救えなかった初めての人間になれる。
英雄を止めてしまうのなら、僕は『彼』の救えなかった最後の人間になれる。
だから、ここで死ぬ以上にいい案なんて思いつかなかった。

鎖の食い込んだ腹が冷える。呼吸が難しくなる。
首まで沈んでしまえば、それはもう気にならなかった。
僕は進まなければならない。島の中心、湖の底へ。
引き上げることも花を供えることもできないように。
泡となって消えてしまえるように。

気道に水が流れ込む。空気が口から溢れる。
引き摺る瓦礫は、不思議と重たくなかった。
沈んだ廃墟に手を掛け、無理矢理に泳ぐ。
脳がズキズキと痛む。温い体液を吐いて、冷たい水を吸い込む。

思考が闇に沈む合間に、漸く気付いた。
これが、コンティニューした先の人生だ。
何度繰り返したところで、僕は僕でしかない。
上辺だけ塗り固めたハリボテ。
砂の上に浮かぶ蜃気楼。
存在すら曖昧な、偽物の砂糖。

英雄が手に入れて嬉しいものではない。
それどころか、一般人ですら欲さないだろう。

僕は願いと命を捨てた。さようなら、英雄さん。
結局の所、人生にコンティニューなど無かったのだ。



生前


砂噛 蜃(さがみ しん)

■■大学に通う成年済みの女性。
短い髪にハスキーな声、細身の173cm。
見た目から、男性と間違えられる事が多い。
本人は間違われても特に気にしないようだ。

人前に出る機会は少ない。
友人と呼べるほど仲の良い相手も居ない。
気さくで卑屈。距離の詰め方がエグい。
ただ、誰かと話している間はなるべく普通にしている。
直ぐに化けの皮が剥げるが。

趣味はゲーム。ポーカーからFPSまで。
ジャンルと媒体を問わず、無節操に手を出している。
そのせいか、一般人より少し上手い、といった程度。


記録
18:終ぞ再会する事は無かった。
51:彼女は今、何を思うのだろう?
92:オッドアイを褒めてくれた社畜。ありがとう。
189:ドラゴンを名乗る少女。僕よりよっぽど強いよ、君は。
約束は守れなかった。僕が消えたことに気付かないといいな。
230:子供っぽい。素手で木は伐採できないらしい。

131:君が救えなかった命だ。

幕-1


英雄になりたかった。
唯一になりたかった。
誰かの物になりたかった。

初めて声を掛けてくれたのは、貴方だった。
生きているとも死んでいるとも知れない生活。
空気のように希薄に生きていた。
そうすれば誰も気付かないから。

そんな僕に笑いかけてくれたのは、何かの間違いだと思った。
――実際は間違いだった、とは思うけれど。
どちらにせよ、僕という存在が誰かの物語に介入した事が愉快だった。

彼女は、普通だった。
甘いものが好きで、誰でも隔てなく話して。
たまに落ち込んでも、すぐに立ち直った。
僕とは正反対だ。肉体の性別以外は。

そんな彼女に恋をするのも自然なことだった。
普通って何だろう。今までの僕は、普通じゃなかった。
男とも女とも見れる容姿。短い髪、低い声。大きな身体。
彼女が求めているのは、きっと男性の僕だ。
だから、頑張ってそう在る様に努力した。
爪は短く切って、脂肪を取らないようにして、ホルモン剤を飲んだりして。
僕自身は、男性になりたい訳じゃなかった。
でも、そうした。それが僕の普通だったから。

幕-2


最初は上手く行っていた。元々清い付き合いだ。
僕は声が低くて、身長が高めで。だから幾らでも誤魔化しは効いた。
少しずつ燃え上がる恋の炎。自分はうまくやれている、と錯覚した。
愛に性行為は要らない。愛とそれは、別のものだと思っていたから。

だからこそ、破綻した。彼女は、僕を求めていた。
存在ではなく、性的なそれでもって。
私に男性であることを求めていた。

はぐらかそうにも、相手は僕を本当に男性だと思っている。
塗り重ねてきた嘘は、一つのヒビから簡単に砕け散った。

「気持ち悪い」

「嘘吐き」

「騙してたんだ」

――違う、そうじゃない。そうじゃないんだ。
僕はただ、ただ。

全て稚拙な言い訳にしかならなかった。

彼女は僕の全てだったし、僕は彼女の全てだった。
共依存、と言えるものだっただろう。
普通だと思って、普通を求めて進んだ道は、全て異常に翻った。

僕らは、互いに全てを失った。
腐敗した肉と血の臭いを今でも覚えている。



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// 寝落常習
// 返信緩慢

// icon:「すーぱーかもみめぇかぁ」様
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