羅刹谷 アゲハ
とある公立高校に通う2年生。
制服改造が趣味で、背負っているリュックには大量のマスコットを付けている。
見た目に似合わず力持ちで運動神経が良い。
気分屋でマイペースな性格だが、友人関係は大切にするタイプ。
『好きな先生に怒られたいから』
そんな理由のためだけに、校則違反や校内での悪戯を繰り返す問題児でもある。
注意されても短いスカートの丈を直さなかったり、使用禁止の教室にこっそり忍び込むなど、
初めは小さな悪戯ばかりだったのだが…
「手のかかる子ほど可愛いって、よく言うじゃん。」
「当たり障りのないイイ子よりも、問題児の方が記憶に残るって──」
あの服装検査の日に、ちゃんとピアスを外して登校していたら。
先生に出会わなかったら。
先生に注意されなかったら。
先生の事を好きにならなかったら。
スカートの丈が3cm短いだとか、
廊下は必ず右側を歩けだとか、
生徒指導室に入るときは3回扉をノックをしろだとか。
先生はとにかく几帳面で、ルールに厳しい。
けれどそんなところが好きだった。
自分とは正反対の生真面目さに惹かれていたのかもしれない。
一度目を付けられてからは、先生と廊下ですれ違う度に何かしらの注意を受けていて。
どんなに小さな違反でも、すぐに見付けて指摘してくれるのが
自分の事をよく見てくれているみたいで…
特別視されているみたいで、ちょっとだけ嬉しかった。
そんな日々が暫く続けば、やがてその嬉しさは恋心に変質してしまったのだ。
先生は、アタシが校内で何かをしでかすと
絶対に真っ先に飛んできて怒ってくれた。
それまでにしていた作業も、他の生徒や先生とのお喋りも、全部を投げ捨てて。
それが嬉しかった。
でも、アタシは先生に構ってもらえるのが好きなだけで…
人に迷惑を掛けて、困らせる行為自体が好きなわけじゃなかった。
だんだん罪悪感に耐えられなくなって、ある日ぱったりと悪戯をやめた。
そしたら先生は、もうアタシの事を叱ってくれなくなった。
教師と生徒。大人の女性と、少女。
初めから叶うはずの無い恋だと、わかっていた。
わかっていたけれど、繋がっていたかった。
今だってこんなに先生の事が大好きで。
繋がっているためには、アタシは悪い子じゃないといけないと思ってた───
これからは。
恋は少し自分本位なくらいがちょうど良い、だなんてよく言うけど。
アタシは今まで、先生の気持ちを何も考えられてなかった。
この島に来てから反省しようと思っていたのに、アタシに与えられたのは…
また誰かに、迷惑を掛けてしまいそうな異能で。
そんな、いつも迷惑を掛けっぱなしの自分を
優しく受け入れて、支え続けてくれる女の人が居た。
一緒にふざけたり、笑ったり泣いたり…本音で話し合える、友達ができた。
二人で空を飛んで、あの綺麗な海を眺められたのも。
最初の日から、最後の日まで。
ただひとりの『眷属』と、大切な時間を過ごせたのも。
それができたのは、アタシが吸血鬼だったからで。
この島で過ごした大切な日々を、忘れたくないから…
◇◆◇
現在バディあり 関係性はなんでもフリー
突発メッセなども嬉しいです
「先生はさ。
アタシの背中に翼が生えたって言ったら、信じてくれる?」
「今までの事、許してほしい…だなんて、言わないけど」
「夜空を飛ぶのって、景色がすっごく綺麗で、風も気持ちいいんだよ。
先生、知ってた?」
「これからさ。
アタシがいい景色、いっぱい見せてあげるから」
「だから──」