大人たちが嫌厭する『 非道徳 』を尊んだ。
皆がああはなりたくないと蔑む『 不健全 』に心を奪われた。
弱い人間を観ているのが大好きだった。
絶望し崩れゆく人間にどうしようもなく惹かれた。
きっとワタシは生まれた時から壊れてた。
そんな自分が正しいとは思えなかった。怖かった。
壊れた私が治るように、ワタシは必死で自分を調律した。
健全であることを重んじて、道徳を育んだ。
退廃的なモノを渇望する心を必死に押し殺した。
人道に則ったこと。道徳的な行い。心清く正しいもの。
それ等が尊むべきもので、美しいものであるとはちょっぴり思えるようになった。
それでもやっぱり私は私を治せなかった。
妻に手を上げ、失墜する父親はなによりも『 美しかった 』
私が最も美しいと心惹かれるは
『 退廃的 』『 背徳 』『 不道徳 』『 インモラル 』
それらの事象、もしくはそれ等を感じさせてくれる人間だ。
退廃的な人間への渇望はどうしても抑え込むことが出来なかった。
私が私を見放して、壊れた思想を許容してしまおうと思った時に、
勝ち残れば願いが叶うというコロシアイの招待状が手元に届いた。
これは私が私で在り続ける為の最後のチャンスだと思った。
フタハナを手にするかどうかは問題じゃない。
命のやり取りが行われるこの島で、私は自分の衝動を押さえ込む。
私がそう在ろうとしたした清らかで慈愛ある私で居続ける。
それが出来たなら、まだワタシは自分を正せるのだと信じよう。
求めるのは自分の壊れた価値観を『救済』すること。
仮に私があまりに『絶望的な』な事象に遭遇してしまって
本性を抑えることが出来なくなったその時は『おぞましい』自分を受け入れてしまおう。
どうか、この島を出る時は清らかな私で在れますように。
でも、そうならなくても……
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診療禄
外 来 診 療 禄
氏名 : 近 衛 真 宵
── 現病歴 ─────────────────────────────────────
2日前日、自宅の階段でつまずき転倒。
左肩部、及び右上腿に痛みがある。程度が酷いため受診した。
事実と相違する可能性有。
── 既往歴 ─────────────────────────────────────
打撲傷・筋挫傷 (2011年)
捻挫 (2011年)
打撲傷・脱臼 (2013年)
筋挫傷・単純骨折 (2014年)
切創・刺傷 (2017年)
熱傷 (2018年)
打撲傷・捻挫 (2020年)
患者は幾度も外傷を負って当院を受診している。
運動部活動には参加しておらず、「ハラスメント」の可能性が非常に高い。
運動部活動には参加しておらず、「ハラスメント」の可能性が非常に高い。
── 生活歴 ─────────────────────────────────────
父親と二人暮らし。キーパーソンは父親。
職業:大学生
知的能力、身体能力に障害はなし。
コミュニケーションにも問題は確認できず。
コミュニケーションにも問題は確認できず。
── 診断 ───────────────────────────────────────
X線検査の結果、骨折は確認できず。
エコー検査にて右上腿に軽度の筋断裂を確認。
左肩部は打撲傷。右上腿は打撲傷、及び筋挫傷として確定。
── 治療プラン ───────────────────────────────────
4~5週間での回復を目処に、保存的療法を行うものとする。
3~5日は内服薬を使用し安静を厳守。
炎症、痛みが緩和されたことを経過観察にて確認出来た後、
手技治療、ストレッチ、超音波治療を主軸にリハビリを開始する。
処方薬:
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症鎮痛剤)
セファクロル(経口抗生物質製剤)
中等学校、高等学校と環境が変わっても定期的に重度の
外傷を負うことから、家庭内で「虐待」が行われていると考えられる。
福祉事務所等への通告を検討する。
外傷を負うことから、家庭内で「虐待」が行われていると考えられる。
福祉事務所等への通告を検討する。
── 患者の意向 ───────────────────────────────────
家庭内での「虐待」、父親からの「暴力」を否認。
福祉事務所や警察など外部機関への通告を拒む。
患者の意思、主張はなるべく尊重するものとする。
── 経過記録 ────────────────────────────────────
患者は「虐待」を否定しているが、その可能性は非常に高い。
当院は福祉所への通告義務を果たす意向。
しかし極力は患者が納得するよう尽力すること。
『福祉事務所への通達の結果、他機関からの連絡により幾度も
家庭内調査が行われていたことが発覚。』
『児童相談所、及び福祉事務所は繰り返し行われる調査の結果、
一度もその事実を確認することができなかった。』
『彼女自身が【虐待】を受けていることを【捏造】していると判断された。』
『その理由は定かではないが、精神状態の乱れを感じざるを得ない。
速やかに精神科への紹介を行うものとする。』
来歴
幼少期
父親は名家の出身で、家柄に恥じることのないエリート。
大学を卒業後にすぐさま外資系コンサルタントの会社を企業。
抜群の経営センスを以って会社を導き、若くして大手企業の社長となった。
そんな起業家の父親と、法律家の母親の間に産まれた双子の妹が彼女。
週末はいつもホームパーティー。自宅には家政婦が何人も常駐していた。
とても恵まれた裕福な環境で幼少期を過ごすことになる。
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少年期
しかし彼女が多感な年頃へと成長した頃、環境が大きく変動する。
父親が自らの会社の代表取締役を「解職」されてしまう。
精神的に疲弊した父親は、母親へと手を上げてしまった。
暴力を振るわれた母親は離別を決め、娘二人を連れて家を飛び出そうとした。
『 パパが一人になっちゃう。可哀想。』
『乾いた心に雫が垂れた。』
けれど彼女は母親の手を振り解いた。
これから孤独になるであろう父親を不憫に思い、彼へと寄り添った。
それ以降、彼女は父親と二人で暮らすことになる。
母親と双子の姉とはそれから一度も会うことはなかった。
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しかし彼女が多感な年頃へと成長した頃、環境が大きく変動する。
父親が自らの会社の代表取締役を「解職」されてしまう。
精神的に疲弊した父親は、母親へと手を上げてしまった。
暴力を振るわれた母親は離別を決め、娘二人を連れて家を飛び出そうとした。
『 パパが一人になっちゃう。可哀想。』
『乾いた心に雫が垂れた。』
けれど彼女は母親の手を振り解いた。
これから孤独になるであろう父親を不憫に思い、彼へと寄り添った。
それ以降、彼女は父親と二人で暮らすことになる。
母親と双子の姉とはそれから一度も会うことはなかった。
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青年期
塞ぎ込んだ父親は、このままではいけないと己を奮い立たせた。
実家からの援助を断わり、新たな会社を立ち上げ、華麗に再起した。
良い出会いにも恵まれ、無事に再婚した。
仕事ばかりだった前回の反省を活かし、家庭に使う時間も増やした。
違う違う違う違う違う違う違うそうじゃない違う違うなんでどうして
そうなるの違うバカ違うワタシは失墜したパパに魅力を感じたのに
ワタシがパパの近くに居たいと思ったのは堕落した美しいパパを見て
いたかったからなのに! アナタの再起なんて家庭の円満なんて望んでない!
『 きっといつかあの時のお父さんに戻ってくれる。』
そう信じて彼が再び堕落するように尽力した。
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人物像
内向的で大人しい性格。
生傷が絶えず、身体のどこかしらに常に包帯を巻いている。
表情が乏しく、人間関係には希薄そうに見える。
涼やかな目付きから冷たい印象を持たれ易い。
──────実際はとても温和で世話好き。
特に心労を抱えた者など、精神的に衰弱した人物を放っておけない性分。
むしろそういった人に惹かれる傾向にある。
一見した印象からかけ離れた性質を持つ彼女は
「冷ややかな博愛主義者」と評されている。
そんな在り方を拗らせてか、現在は大学で心理学を専攻して学んでいる。
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PL
ログ公開OK ,オールフリー。
最高のバディに恵まれました。