名前は井上ハル。
ポチという名前を名乗っていた、
だぼついたジャージを着た子供。
かなり状況を理解してきた。
リードのついた首輪は捨ててしまった。

血のにおいがする。


それでも大人になる。






***


強い光を感じて、目をひらいた。
おまわりさんの服を着たおじさんが、懐中電灯を持ってそこに立っていた。
手をつないで、倒れていた林から出た。
そこは車通りのぜんぜん無い道路で、
一台、パトカーがぽつんと停められていた。
それに乗るように言われたけど、せまくてこわかったから、首を振った。
おじさんはそうか、と言った。
そのうち乗ることになるのはわかってたんだけど、
おじさんは急かさなかった。

空気はひんやりとして冷たかった。
おどろくほど静かで、虫の鳴く声ばかり響いた。
パトカーの横でしゃがみこんで、それをずっと聞いていた。
そのうちに、おじさんがなにか渡してきた。
包装されたメロンパン。
プリントされたコンビニのロゴとか、金額。
うちがぼーっとそれを眺めていたら、おじさんは慌てて、
袋を破いてからまた渡してきた。
甘い香料のにおいがした。

それでなんとなく、帰ってきたんだな、ってわかった。

***


*PLはmk_lk22です。
諸連絡お気軽にどうぞ。
ログ公開OK。
RP上の制限やNGは今のところ考えていません。