PL・illustration:ルルクス(@I_am_Rurux/@SapphireDevil1)




あなたと初めて会ったのは、大学生の時。
茶道部に見学をしてきたあなたと目が合ったのを、覚えているわ。
気弱で、おどおどしてて、可愛かったあなた。
可愛い後輩だなと思いながら、色々お話をしたのよね。
あなたが、私の事好きなんだろうなと気付いたのは、そこから1年経ってから。
一緒にお出かけしたり、遊びに行ったりとかもしたりしたわ。
デートの度にあなたが行先に悩んで決められないのには、
頼りないなと思いながらも、その手を引くのは嫌いじゃなかった。
大学を出たら、もう付き合いなんて無くなっちゃうと思ってた。
きっと大学を出たら連絡も取らなくなるだろうし、会わなくなるだろうなって。
でも、あなたは、度々連絡をくれた。度々、会いに来てくれた。
あなたと会えることが楽しみになっている事に、気付いた。
あなたとずっと一緒に居たいと思っている事に、気付いた。
だから。
あなたにプロポーズされた時は、本当に、本当に、嬉しかった。
あなたもそう思ってくれていたことが、嬉しかった。
*
子供が欲しいんだって言った時、
あなたがすごい驚いた事を覚えている。
でも、産むってなるとちょっと怖くて、
子供をもらってこようって、話になった。
親に望まれなかった子供が、親を失ってしまった子供が
この世界にはたくさんあるから
せめてその中からひとりだけでも
私達が望んで、愛して、あげたいって
そうしてうちにきたのが、双華ちゃんだった。
ちいさい子供は、私達の手の内に来た子供は、
ほんとうに稚くて、小さくて、可愛かった。
……自分で産んだ子供じゃなきゃ愛せる訳ないなんて
そんな心無い言葉は、聞かなかった事にした。
ひとり、小さな命を抱えて。
二人で、たくさん悩みながらも育てて行って。
お母さんやお義母さんに色んな事を訊いて、
間違えたことはたくさんあるかもしれないけれど、
それでも、確かに愛をもって、娘を育てて。
幸せだった。
幸せだった、けれど。
小さな子供を見ていて、欲が湧いてきてしまったの。
あなたとの子供を産みたい、って。
あなたとの子供も欲しい、って。
────そうして産んだのが、双葉ちゃんだった。
目元が私に似てるってあなたが笑ったのを覚えている。
痛かったけれど、苦しかったけど、しんどかったけれど
私から産まれて来たあの子を見た時、
そんなこと、全部忘れてしまった。
温かくて、柔らかくて、小さくて。
愛おしくて、愛おしくて、仕方が無かった。
双華ちゃんはパパに似て大人しくて、優しくて、よく双葉ちゃんの面倒をみようとしていたわ。
双葉ちゃんはママに似て活動的で、でもちょっとびびりさんで、よくママに泣きついてきたのよね。
双華ちゃんと双葉ちゃん、どちらも可愛い私の子。
幼稚園を出て、小学生になって、中学生になって、高校生になって。
ちょっとずつ少しずつ、手がかからなくなっていく事に、寂しさを覚えたけれど
でもよかった、あの子たちはパパに似て、優しく育って行ったから。
きっと、私達が居なくても大丈夫だと思ったけれど。
まだ家のローンだって残ってるし、
娘たちが大学に行くのにだってお金はかかるんだし、
もうちょっと、ちゃんと私達が支えてあげないと。
だって、私達はお母さんだから。
これからも。